研究課題/領域番号 |
23K07614
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 崇 千葉大学, 未来粘膜ワクチン研究開発シナジー拠点, 特任助教 (20823561)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
本年度は【研究計画1】HDM誘導性アレルギー性気道炎症におけるA. muciniphilaの役割の検討を一部内容を変えて行った。本研究者はまず、腸内細菌叢がアレルギー性気道炎症に寄与するメカニズムを明らかにするため、抗生剤投与により腸内細菌叢を枯渇させたマウスにおけるアレルギー性気道炎症の表現系について評価を行った。具体的にはSPF(Specific pathogen free)環境下に飼育されているC57BL/6Jメスマウスにアンピシリン、ストレプトマイシン、コリスチンを2週間投与し、腸内細菌叢を枯渇させたマウスとコントロールとして通常飲水をしたマウスを作成し、両者にアレルギー性気道炎症を惹起することにより、喘息の表現系を確認した。その結果腸内細菌叢枯渇マウスでは野生型マウスに比べ好酸球・CD4 T細胞数の上昇が見られ、また、絶対数のみならず炎症細胞における好酸球の割合も増加していた、更に肺組織のHE染色解析では腸内細菌叢枯渇マウスではコントロールマウスに比べ、気管支・血管周囲の炎症細胞浸潤が増加していることが明らかとなった。更に同様の実験系にて、血清中の免疫グロブリンについて解析をおこなったところ、HDM特異的IgG1が腸内細菌叢枯渇マウスにて増加が見られることが明らかになった。なおHDM特異的IgEは検出感度以下となっていた。以上より腸内細菌叢枯渇マウスではHDM誘発性アレルギー性気道炎症が増悪すること、つまり腸内細菌叢がアレルギー性気道炎症に対し抑制的に働くことが明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の本年度は【研究計画1】HDM誘導性アレルギー性気道炎症におけるA. muciniphilaの役割の検討を一部内容を変えて行った。本期間には、喘息モデルマウスやフローサイトメトリー、ELISA、組織学的解析を組み合わせた実験計画を綿密に遂行することにより、以上より腸内細菌叢枯渇マウスではHDM誘発性アレルギー性気道炎症が増悪すること、つまり腸内細菌叢がアレルギー性気道炎症に対し抑制的に働くことが明らかかとした。以上より概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にはHDM誘導性喘息モデルマウスに対するA. muciniphila生菌およびPasteurized A. muciniphila投与の影響の検討を行う。SPF(Specific pathogen free)環境下に飼育されているC57BL/6Jメスマウスに、ゾンデを用いてA. muciniphila生菌或いはPasteurized A. muciniphila (1.0*10^9 cfu/PBS 200μL)を週3回計4週間経胃投与する群、およびコントロールとしてPBSを投与する群に、チリダニ(House dust mite)をアレルゲンとしたアレルギー性気道炎症を誘導する。その後、肺や縦隔リンパ節、気管支肺胞洗浄液に存在する免疫細胞の数、性質及び機能の変化を遺伝子、細胞、組織レベルで比較解析する。以上の実験によりA. muciniphila生菌投与によるHDM誘導性喘息モデルに与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究の達成に必要なAkkermansiaの発育が予想されるより不十分であり、計画された研究を十分に行うことができなかったため次年度使用額が生じた。 次年度使用額(558,964円)は酵素、サイトカイン、阻害剤、実験動物関連費用、各種抗体、牛血清等の物品費に当てる予定である。酵素、サイトカイン、阻害剤に計10万円、実験動物関連費用に15万8964円、各種抗体に10万円、牛血清に20万円使用する予定である。 なお、本助成金を旅費、人件費、大型機器の購入にあてる予定はない。
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