研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患 (chronic, obstructive pulmonary disease, COPD) はタバコ煙等を長期に吸入曝露することにより、気道および肺胞構築が破壊され進行性の気流制限を呈する難治性呼吸器疾患であり、世界的死因の第3位である。安定期COPD患者は、ウイルス感染等を契機としてCOPD増悪を呈し、呼吸機能低下、生命予後悪化を来す。しかしこの病態の分子生物学的理解は不十分であり、COPD増悪を予測するバイオマーカーを開発し、呼吸機能低下の進行を抑制するCOPDの疾患修飾薬を創出することが急務である。 COPDにおいて、肺胞マクロファージ (alveolar macrophage, AM) は炎症性サイトカインの過分泌による慢性炎症持続化、プロテアーゼ産生による肺気腫化の原因となることが知られている。しかし、COPD肺におけるすべてのAMに機能異常が認められるのか、COPDの増悪や進行に関与する特定のサブセットが存在しているかは不明である。このような背景から本研究課題における問いは「COPDにおいて、増悪や病態の進行に関与する特定のAMサブセットが存在するのか、もし存在するのであれば、どのような分子基盤を形成し、どのような機能変化を生じているのか」である。このような病態に直接関与するAMサブセットを同定できれば、COPDの増悪や進行のバイオマーカー同定、疾患修飾薬創出の理論的基盤の構築が可能になると期待される。 初年度の研究では、Siglec-1陰性AMの表面マーカーについて蛋白発現を検証し、CCR2、CCR5等の発現を検証し、肺機能検査との相関を確認した。
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