研究課題/領域番号 |
23K07622
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡本 師 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 准教授 (60724200)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 過敏性肺炎 / B細胞 / マウスモデル / 炎症 |
研究実績の概要 |
過敏性肺炎は様々な特異抗原を吸入しIII型あるいはIV型アレルギー反応で発症する間質性肺炎である。成熟B細胞が産生する抗原特異的な抗体により免疫複合体を形成し、補体活性化を経て組織傷害を引き起こす。しかし、このIII型アレルギー反応で重要な働きをもつB細胞について、その抗体産生や成熟分化に関わるエビデンスは乏しい。本研究の目的は、過敏性肺炎のマウスモデルおよび臨床検体を用いて、過敏性肺炎発症におけるB細胞活性化の機序を明らかにすることである。 研究計画に対する実績を以下に示す。①遺伝子改変マウス(RAG2ノックアウトマウス、μMTマウス)を用いることでB細胞の重要性を明らかにする。RAG2ノックアウトマウスにおける過敏性肺炎モデルでは気管支肺胞洗浄液細胞濃度が減少される傾向を認めた。現在はμMTのヘテロマウスを飼育しホモのマウスを入手する準備をしている。②B細胞の分化を明らかにする:C57BL6/Jマウスを用いて過敏性肺炎マウスモデルを作成し、肺、脾臓、リンパ節中の種々のB細胞(ナイーブB細胞、形質芽細胞、記憶B細胞など)の割合をフローサイトメトリーで測定した。 今後は、①免疫染色にて肺組織および2次リンパ組織の活性化B細胞の局在を明らかにする。②B細胞活性化に関わる因子(サイトカインやケモカイン、抗体のアイソタイプ)をmultiplex panelで測定する。③B細胞活性化に関わる遺伝子発現プロファイルを明らかにする:肺組織を用いてsingle cell RNA-seqを解析し、B細胞の活性化に関わる遺伝子発現プロファイルを明らかにする。④臨床検体を用い、活性化B細胞のプロファイルを明らかにする。⑤臨床情報との関連を解析し、新規バイオマーカーや治療の標的を同定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023~2024年度には以下の項目を検討することとしている。 ①B細胞の活性化に関わるプロファイルを明らかにする。C57BL6/Jマウスを用いて過敏性肺炎マウスモデルを作成し、末梢血、BALF、肺、脾臓、リンパ節中の種々のB細胞の割合をフローサイトメトリーで測定する。②活性化B細胞の局在を明らかにする。③B細胞活性化に関わる因子(サイトカインやケモカイン、抗体のアイソタイプ)を測定する。④B細胞活性化に関わる遺伝子発現プロファイルを明らかにする。⑤遺伝子改変マウス(背景はC57BL6/J)を用いることでB細胞の役割を明らかにする。B細胞、T細胞、NK細胞が欠損しているRAG2ノックアウトマウスおよびB細胞のみ欠損しているμMTマウスを用いる。⑥臨床検体を用い、活性化B細胞のプロファイルを明らかにする。⑦ヒトにおけるB細胞の分化・増殖を明らかにする。⑧活性化B細胞の局在を明らかにする。⑨B細胞活性化に関わる因子を測定する。 上記のうち、すでに過敏性肺炎マウスモデルは確立し経時的な炎症細胞数の変化を確認した。①におけるB細胞の分化度に応じたフローサイトメトリーのパネルも確定し、wild typeマウスで検証中である。②についても過敏性肺炎モデルにおける活性化B細胞の局在をCD45Rにて確認した。⑤におけるRag2ノックアウトマウスにて過敏性肺炎モデルを作成し野生型と比較した。さらにμMTマウスを実験動物センターにて準備中であり、数か月後に検討可能な状態となる。⑥~⑨において臨床検体を用いて検討するが、臨床検体の多くがすでに保存されている。以上より研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度~2024年度に計画している研究を進めていく。 ①まずは野生型マウスによる過敏性肺炎モデルにおけるB細胞の分化を明らかにする。また活性化B細胞に関わる抗体アイソタイプおよびサイトカインを明らかにする。さらに、ヒトの血液や気管支肺胞洗浄液など臨床検体におけるB細胞の活性化分画および抗体アイソタイプを明らかにする。 ②B細胞のみ欠損しているμMTマウスを用いた過敏性肺炎モデルを作成することにより、過敏性肺炎におけるB細胞の重要性を明らかにする。過敏性肺炎モデルの作成過程における時間ごとのB細胞活性化の状態も把握する。 ③これらの結果をうけて、2025年度に計画している新規バイオマーカー・治療の標的を解明していく。肺機能低下や予後などの臨床情報との関連を解析し、新規バイオマーカーや治療の標的を同定する。 計画通りに進まないときの対応:遺伝子改変マウスでは病変が軽減されることが予想されるが、変化が見られない場合でも、野生型マウス(C57BL6/J)におけるB細胞の増加を確認しているため、その活性化機構を明らかにすることは重要であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスモデル作成および予備実験を主に実施していることから費用が抑えられた。また、複数の遺伝子改変マウスは購入することなく譲渡していただいたことから、遺伝子改変マウスに係る費用を抑制することができた。 2024年度には現在準備している遺伝子改変マウスの匹数が十分にそろうことから、実験を進めていくことができる。遺伝子改変マウスの表現型の検証、B細胞の成熟分画の評価、ヒトの抗体タイピングを行う予定である。
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