研究実績の概要 |
BHT肺傷害後の再生過程のタイムポイントの特定のため、Ⅱ型肺胞上皮細胞を単離してbulkRNA-seq解析を行った。GSEA解析では時系列に特徴的な経路が検出され、早期には抗酸化ストレスによるBHTへの耐性、続いて細胞増殖や転写領域の変化に向けたDNAに関連する経路の活性化を認めた。興味深い事に、第2日周辺のRNAの動きは非常に小さく、組織解析でも大きな変化はなかた。第3日のⅡ型肺胞上皮細胞は大変活性化し、これを単離してオルガノイドを作成したところ、非刺激マウス由来のⅡ型肺胞上皮細胞よりも高いコロニー成形効率を達成した。このことよりⅡ型肺胞上皮細胞は活性化状態にあり、微小環境によっては増殖への対応が速やかであることが示唆された。 Trasitional stateへの移行が傷害後第3日に発生し第4日に戻る事に注目した。第3.5日のサンプルはKrt8,Cldn4など、PATS,DAPTなどのマーカーが陽性であり、Ⅰ型肺胞上皮細胞への分化期間であることが示唆されてた。しかしながら、以降のタイムポイントにおいてTrasitional stateマーカーが遷延して現れることはなく、Ⅰ型肺胞上皮細胞への完全な分化を示唆する所見である。 第3日の肺を用いてシングルセル解析を行い、肺内の細胞間ネットワークの検討を行った。上皮細胞、間葉系・内皮細胞、免疫細胞の各クラスターに分類して解析を行い、ILC2の活性化やTh17細胞の活性化、マクロファージの分画の変化などを検出した。
|