研究実績の概要 |
本研究は、皮膚粘膜の薬疹であるStevens-Johnson症候群 (SJS)およびその重症型である中毒性表皮壊死融解症 (TEN)の気道粘膜における慢性持続炎症の背景因子を解明することを目的とする。SJS/TENは突然に全身の皮膚・粘膜障害を生じ、急性期死亡が約3割に至る重篤な稀少難病である。皮膚壊死所見は急性期を超えれば(約1ヶ月で)上皮化して機能障害をきたさない一方、気道粘膜・眼粘膜障害は慢性期まで持続し生涯に及ぶ後遺症となることが課題であるが、その病態は未だ不明である。SJS/TEN急性期の皮膚上皮壊死には表皮内浸潤した好中球の細胞外トラップ現象と速やかな消退が深く関わる知見を参考に、慢性期まで炎症が持続する気道粘膜病変では好中球機能の障害及び過剰な好中球細胞外トラップ炎症が関わる仮説をたてる。本研究では慢性期の粘膜障害を持つ患者の好中球機能を評価し、呼吸器臨床所見との関連を検討することで慢性期の気道粘膜障害の病態解明を目指す。 慢性期呼吸器障害をもつSJS/TEN患者の検体を用いて好中球貪食能評価、好中球殺菌能評価好中球細胞外トラップ評価として好中球呼吸バーストおよび関連サイトカインとしてLipocalin-2, エラスターゼ,ミエロペルオキシダーゼ, dsDNA,LL-37, IL-1β, CXCL8を測定を予定する。本年は当院眼科SJS外来通院中、もしくはSJS患者会の患者でSJS/TEN発症以来持続的に呼吸器症状を有する患者を、SJS呼吸器外来診察時に同意 取得・患者集約を行い、血液検体の収集を行いつつ、自験例について慢性期呼吸器合併症・呼吸器症状の出現の有無等を含めた長期間のフォローアップデータを後方視的に検討する。
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