研究課題/領域番号 |
23K07635
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 教授 (10226681)
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研究分担者 |
光石 陽一郎 順天堂大学, 医学部, 助教 (10647001)
新井田 要 金沢医科大学, 総合医学研究所, 教授 (40293344)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リンパ脈管筋腫症 / 腫瘍抑制遺伝子 / 間葉系幹細胞 / 分化制御異常 |
研究実績の概要 |
8例のLAM患者の臨床検体(肺移植時の摘出肺組織4例、肺組織からの培養細胞3例、LAM細胞クラスター(LCC)2例; 1例は複数材料あり)について次世代シークエンサー(NGS)を用いてTSC2変異解析を行った。その結果、病的TSC2変異を6例で検出、2例ではTSC1およびTSC2変異とも認めなかった。病的変異を認めた6例中1例は2つの異なるTSC2変異を類似したアレル頻度で認め、2-hitが疑われた(以下、症例A)。5例では1種類の病的TSC2変異が認められたが、このうち1例ではアレル頻度が41%と高い頻度で認められcopy neutral LOHによる2-hitが疑われた(以下、症例B)。症例A,BのゲノムDNA中の病的変異アレル頻度を定量的に評価するために、2症例の計3病的変異をdigital PCRで検出するアッセイシステムを構築した。変異DNAを人工合成して陽性コントロールとして、正常ゲノムDNAを陰性コントロールとし、変異特異的TaqManプローブを合成し、条件検討をおこなった。実際にNGSの材料とした臨床検体のゲノムDNAを用いてdigital PCRを行った結果、症例Aの2つの病的アレル頻度はそれぞれ12.2%、12.6%であった。また、症例Bの病的アレル頻度は37.1%であった。現在、変異を有するLAM細胞が、これらの症例のLCCを間葉系幹細胞メディウムで培養し、維持できるかどうか検討を開始したところである。次に、凍結保存済みのLAM肺組織細胞を間葉系幹細胞培地で培養後、脂肪分化培地に交換して3週間培養すると脂肪滴を細胞質内に産生することが確認でき、脂肪細胞への分化能を有すると考えた。しかし、NGSではこれらの細胞のゲノムDNAにTSC2変異は認められなかった。対照として、肺組織由来間葉系細胞を初代培養中、脂肪由来間葉系幹細胞株を培養中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAM患者の臨床検体からLAM細胞をin vitroで培養した際に、LAM細胞が継代出来ているかどうかの指標は従来は存在しなかった。しかし、変異解析技術の進歩を取り入れて、培養細胞集団内にTSC2変異を有する細胞が持続的に含まれているかどうか評価することが可能となった。症例A、Bについては凍結保存した細胞があるため、今後、間葉系幹細胞用メディウムにより培養する際に、細胞外基質コーティングの有無、3次元培養の応用の有無、などの複数の培養法のメリット、デメリットも検討することが可能である。 一方、長年保存してきたLAM肺組織由来の凍結間葉系細胞(平滑筋細胞用培地で培養し保存)を解凍して、間葉系幹細胞培地(ExMSC)で培養することで、脂肪細胞に分化する能力をもつ細胞が含まれていることが明らかになっ初代培養中の初代培養中の肺組織由来間葉系細胞、購入した脂肪由来間葉系幹細胞株との違い、類似性などの細胞生物学的特性を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
digital PCR法による変異細胞の検出を行いながら、TSC2変異LAM細胞を含んだまま継続培養できる系を確立したい。間葉系幹細胞は様々な環境変化に応じて増殖、分化するため条件検討には肺組織由来間葉系幹細胞(L-MSC)、脂肪由来間葉系幹細胞株(L-MSC)をもちいて予備実験を行う。また、Crisper-Cas9システムをもちいてL-MSC、Ad-MSCのTSC2をノックアウト(KO)し、KO細胞の細胞生物学的特性を評価する。これらの実験データを参照して、LAM患者培養条件の培養条件を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は順調に遂行できているが、若干の繰越金が生じた。無理に消費するより、2年目の研究で有効活用可能であるため、繰り越しとした。
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