研究課題/領域番号 |
23K07653
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
益田 武 広島大学, 病院(医), 助教 (80747890)
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研究分担者 |
服部 登 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (00283169)
坂本 信二郎 広島大学, 病院(医), 助教 (30816541)
中島 拓 広島大学, 病院(医), 助教 (90643792)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / PAI-1 / 初期耐性 / 複合免疫療法 / 放射線治療 |
研究実績の概要 |
ヒト肺腺癌細胞株 (A549) に対して、放射線照射後(2Gy/日、4回)に残存する耐性細胞は無治療群と比較して、PAI-1 mRNAを約4倍発現することを認められた。この耐性細胞の培養を続けると、細胞が再増殖するが、PAI-1阻害剤を添加すると再増殖が抑制された。また、A549細胞をプレーティングして24時間後から放射線照射(2Gy/日、4回)を行った場合、無治療群に比べると細胞増殖は抑制されるが、3日目から徐々に増殖が認められた。一方で、放射線照射とPAI-1阻害剤を併用すると、3日目以降も放射線照射単独群よりも細胞増殖が抑制された。 放射線照射後(2Gy/日、4回)のA549細胞と無治療のコントロール細胞を用いてマイクロアレイにより網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、放射線照射群では一部のアポトーシスシグナルの亢進が認められたが、一方でアポトーシスを抑制する遺伝子群も高発現しており、最終的にアポートシスに繋がるCaspase-3は発現が低下していた。また、放射線照射後の残存細胞は細胞の老化の程度を示すSA-β Gal発現が亢進していた。ここで、PAI-1阻害剤によりPAI-1の機能を抑制すると、SA-β Gal発現が抑制されることが示された。以上より、放射線照射後の癌細胞の耐性には、PAI-1が癌細胞のアポトーシス抑制と老化を介して関与していることが示唆された。 続いて、C57/BL6マウスにマウス肺腺癌細胞を接種して皮下腫瘍モデルを作成した。放射線照射(2Gy/日、8回)を行った場合、皮下腫瘍の増殖が無治療群よりも抑制されたが、経過中に増殖が認められた。そして、放射線照射後の腫瘍は無治療群よりも免疫染色によりPAI-1タンパクを高発現していることが確認された。そして、マウスにPAI-1阻害剤を経口投与すると、放射線照射単独群よりも腫瘍増殖が統計学的有意に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に計画していた実験は終了しているため。非小細胞肺癌に対する免疫療法による初期耐性細胞の生存にPAI-1が関与するかどうかの検討についても、予備実験が終わり、本実験のデータを収集しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
PAI-1の放射線耐性における関与の検討については、今後、PAI-1による放射性抵抗性獲得機序の詳細な検討を行う。また、他の細胞株を用いた検討も行う。in vivoでは、A549細胞を用いた皮下腫瘍モデルにおいて、PAI-1の放射線耐性への関与も検討する。続いて、化学放射線療法後に外科手術された局所進行NSCLC症例において、手術検体では術前の生検検体よりも癌細胞のPAI-1発現が増強しているかどうかを免疫染色により比較する。 非小細胞肺癌に対する免疫療法による初期耐性細胞の生存にPAI-1が関与するかどうかの検討も進めて行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究室で保管していた試薬を実験に充てることができたため。ただ、2024年度はこのような実験試薬は無く、遺伝子改変マウスを使用した実験を計画しているため、研究費を全て使用する予定である。
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