研究課題/領域番号 |
23K07673
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中司 敦子 岡山大学, 大学病院, 講師 (00625949)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 腎尿細管 / ミトコンドリア / 老化 / Vaspin |
研究実績の概要 |
酸化ストレスは老化を促進させる因子のひとつである。培養近位尿細管細胞(HK2細胞)を用いて過酸化水素 400μMで刺激すると、細胞周期停止マーカーであるp21やp53発現が増加し、Vaspin添加により抑制された。またH2O2によるTom20やp62の蓄積もVaspinにより抑制された。Mitotrackerでミトコンドリア形態を観察するとH2O2により断片化したaspect ratioが1に近いミトコンドリアが増加した。当初、ミトコンドリア融合に関わるMfn2についてH2O2による減少を予想していたがH2O2によりMfn2増加が認められた。Mfn2はミトコンドリアと小胞体の接着にも関与することからSplit-GFPシステムにより両オルガネラ接着を検討するとH2O2により接着が増加し、Vaspinにより軽減された。小胞体からミトコンドリアへのCa2+流入の増加はアポトーシスを誘導するが、H2O2によりBax発現が増加し、Vapsinはこれを抑制した。また動脈硬化や線維化は腎虚血と関係が強いが、DFOで低酸素を誘導するとミトコンドリアは断片化が進みMfn2蛋白量が減少したが、Vaspinはこれらを回復させた。 我々の先行研究においてVaspinの作用機序の一部にはHSPA1Lが関与していた。HSPA1LはParkinやHIF1αと複合体を形成することやマイトファジーを促進する既報が存在する。今回、新たにHSPA1Lと複合体を形成する分子を見出し、ミトコンドリアダイナミクスに関与する可能性を示唆する結果を得た。またDFOによる低酸素誘導はHSPA1L蛋白量を減少させた。さらにVaspinがHK2細胞においてもAMPKを活性化させ、これは我々が以前肝細胞で検討した結果と同様であった。これらの結果をもとにVaspinの老化抑制についてin vivo検討を現在進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化ストレスや低酸素によるミトコンドリア形態変化をVaspinが軽減することを確認できた。またVaspin-HSPA1L経路とミトコンドリアダイナミクスを繋ぐ分子のひとつを同定できた。
|
今後の研究の推進方策 |
Vaspin遺伝子改変マウスを用いて高齢マウスを作成飼育中である。2年の時点で腎組織を採取して老化マウスミトコンドリアや線維化におけるVaspinの作用を明らかにする。 ミトコンドリア機能や老化におけるVaspinの作用意義や分子機序の解明を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
組織標本薄切を外注から研究室で実施できるようになったため。次年度、ウエスタンブロット・染色に必要な抗体を購入予定である。
|