研究課題/領域番号 |
23K07704
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | メカノバイオロジー / Piezo1 / Piezo2 / 遺伝子改変マウス / ポドサイト / メサンギウム細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、Piezo1, Piezo2のKOマウスを、腎臓のメカノバイオロジー的に重要な役割を持つ細胞に特異的に作製し、その病態解析を行うことを目的とする。本目的を達成するために、今年度は正常マウスやレポーターマウスを用いた発現調節解析、メサンギウム細胞・線維芽細胞・ポドサイト特異的KOマウスの作製と形態機能解析を行った。 まず、正常マウスにおいて片側尿管閉塞(UUO)モデルを作製してPiezo2発現を定量PCRで解析したところ、時間依存的な発現上昇を認めた。正常マウスとPiezo2-GFPレポーターマウスを用いてUUOモデルを作製し、Piezo2 mRNAの局在とPiezo2-GFP融合蛋白の局在を解析したところ、両者は概ね一致していた。次に、Pdgfrb-Cre/ERT2マウスとPiezo2 flox/floxマウスを掛け合わせ、タモキシフェン誘導性細胞特異的Piezo2 KOマウスを作製した。産仔のうちCre陽性ホモマウスの割合が非常に低かったため、別のPdgfrb-Cre/ERT2マウスを購入し、ようやく安定したCre陽性ホモマウスを得ることができた。Cre陰性マウス、Cre陽性ヘテロマウス、Cre陽性ホモマウスにタモキシフェンを投与し、時期・細胞特異的KOマウスを作製し、十分なPiezo2欠損を生じるタモキシフェンの投与法を確立した。本マウスを用いて腎障害モデルを作製し、KOマウスと対照マウスで腎障害の表現型を比較している。Nphs1-Cre Piezo1 flox/floxマウスを用いてポドサイト特異的Piezo1 KOマウスを作製し、KOマウスと対照マウスで腎障害の表現型を比較し、Piezo1が欠損することで腎障害が変化するメカニズムを解析している。 以上のように、Piezo1, 2の細胞特異的な生理学的・病態生理学的役割を解析する系が確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pdgfrb-Cre/ERT2マウスを購入してPiezo2 flox/floxマウスと掛け合わせたが、Cre陽性ホモマウスがなかなか得られず、別系統のPdgfrb-Cre/ERT2マウスを購入し直したところ、今度は繁殖がうまくいき、安定したCre陽性ホモマウスを得ることができるようになった。Nphs1-Cre Piezo1 flox/floxマウスも安定したCre陽性ホモマウスを得ることができている。このように、現在Piezo1, 2の細胞特異的な生理学的・病態生理学的役割を解析する系が樹立でき、解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、遺伝子改変マウスを作製してPiezo1, Piezo2が腎病変形成過程に果たす役割を解明し、新規治療法開発の端緒とする。本目的を達成するために、レポーターマウスを用いた発現調節解析、メサンギウム細胞・線維芽細胞・ポドサイト特異的KOマウスの作製と形態機能解析、培養細胞を用いたメカノ感知応答分子機構の解析を行い、実験動物、細胞、分子レベルで解析を実施する。 初年度の研究で、足細胞特異的Piezo1 KOマウス、Pdgfrb陽性細胞特異タモキシフェン誘導性Piezo2 KOマウスを樹立することができ、障害モデルの解析に着手したので、次年度以降、その解析を継続するとともに、in vitro細胞培養系での検討も行い、その病態生理的役割とシグナルカスケードを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3,360円の残額が生じたが、これは初年度からの継続研究(細胞特異的ノックアウトマウスの作製と解析)に使用する予定である。
|