研究課題/領域番号 |
23K07705
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
菱川 彰人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50867489)
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研究分担者 |
林 香 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60445294)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / DNA損傷修復 / 臓器連関 |
研究実績の概要 |
本研究では、近位尿細管細胞(PTEC)におけるDNA二重鎖切断(DSB)が腎臓病および全身の代謝変容に与える影響を明らかにすることを目的とした。PTEC特異的にDSBを誘導するI-PpoIマウスを作製し解析を行った結果、I-PpoIマウスでは尿細管マーカーの軽度上昇に加え、体重減少、肝臓の遊離脂肪酸増加、脂肪量減少、耐糖能異常を認めた。また、腎皮質、肝臓、内臓脂肪組織において炎症性サイトカインや老化マーカーの発現上昇を認めた。メタボローム解析では、腎皮質と肝臓においてミトコンドリア機能障害と脂肪酸代謝異常を認めた。末梢血のメチル化解析では、糖尿病合併症に関連するKLF9の下流遺伝子の低メチル化を認めた。in vitroでは、DNA損傷を誘導したPTECの培養上清により、脂肪細胞分化の抑制を認めた。 以上より、PTECのDNA損傷は全身の代謝老化を引き起こす可能性が示唆された。PTECのDNA損傷に起因する代謝変容カスケードを明らかにすることで、全身性代謝障害の治療戦略となりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物の作成や表現型解析とともに、メタボローム解析は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
PTEC特異的にDSBを誘導するI-PpoIマウスの腎臓皮質のシングルセルRNA-seq解析により、PTECのDNA損傷に起因する腎臓内の細胞集団の変化を明らかにし、全身性代謝障害への関与をさらに解明していく予定である。これらの知見を基に、PTECのDNA損傷に起因する全身性代謝障害の新たな治療戦略の開発を目指したい。
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