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2023 年度 実施状況報告書

急性腎障害におけるミネラルコルチコイド受容体を標的とした新規治療戦略の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K07706
研究機関順天堂大学

研究代表者

若林 啓一  順天堂大学, 医学部, 助教 (60748565)

研究分担者 上田 誠二  順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (80322593)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード急性腎障害 / ミネラルコルチコイド受容体 / 終末糖化産物受容体 / 腎虚血再灌流
研究実績の概要

急性腎障害(AKI)と慢性腎臓病(CKD)との密接な関係「AKI to CKD transition」が認知され始めたが、この移行メカニズムには不明な点が多い。一方、腎臓病における治療標的としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の関与が明らかになりつつあり、肥満や糖尿病、CKDの病態においてMR活性化が生じ、標的臓器に障害を惹起することがわかってきた。我々は近年、終末糖化産物受容体(RAGE)を介したRac1の活性化がMRを活性化し、ポドサイト障害を惹起することを明らかにした。この研究を踏まえ、RAGEのリガンドの1つであり、AKIで上昇する核蛋白であるHMGB1に着目し、「HMGB1/RAGE軸とMR経路との連関がAKI環境下において内皮障害を惹起し、臓器障害の発症・進展・慢性化に関与する」との仮設を立てた。この仮説を検証するために、AKIモデル動物である腎虚血再灌流(I/R)マウスを用いて、AKIやその後のCKDの発症におけるHMGB1-RAGE-MR経路の関与について検討を行った。
まずI/Rマウスを作成し、内因性のHMGB1/RAGE軸やMR経路の発現、炎症や線維化に関連する遺伝子発現、臓器障害の程度を評価した。さらにMR拮抗薬前投与群を作成し、同様に評価した。I/R群ではHMGB1/RAGE軸、及びRac1-MR経路の活性化を認め、これらは全てMR拮抗薬により抑制された。さらにI/R群では腎機能障害や尿細管傷害を呈したが、MR拮抗薬により改善し、MCP-1やNFκB、TGF-β、Kim-1等の遺伝子発現を減少させた。またI/Rの7日後ではMR拮抗薬により腎機能障害や組織障害のみならず、生存率も有意に改善した(I/R群:43%、I/R+MRB群:79%)。以上から、HMGB1-RAGE軸とMR経路の連関が、AKIやその後のCKDの発症に関与する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IRマウスを用いた動物実験の結果から、HMGB1-RAGE軸とMR経路の連関がAKIやその後のCKDの発症に関与する可能性が示唆された。これらの因果関係を証明するために、細胞実験として培養したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)にHMGB1を添加し、Rac1-MR経路の発現やMCP-1・NFκB等の遺伝子発現を解析した。その結果、HMGB1添加によりMRの核内移行が促進される他、Rac1活性やMCP-1・NFκBの遺伝子発現が亢進し、これらはMR拮抗薬投与により改善した。これらは動物実験の結果を支持するものであり、進捗状況としては概ね順調であると考える。

今後の研究の推進方策

I/RマウスにおいてMR拮抗薬が治療効果を示した背景を探索するために、今後マクロファージ発現MRに着目し検証する予定である。予備実験として組織修復に関連するM2マクロファージ関連遺伝子をRT-PCRで解析した所、MR拮抗薬投与群においてYm1、Arg1といった遺伝子発現の増加を認めた。今後免疫染色を行うことにより検証を進めていく。

次年度使用額が生じた理由

研究費を効率的に使用したため、残額が生じた。次年度は実験の遂行に加え、国内外の学会発表や論文投稿の機会を増やし、その費用に充てたいと考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] HMGB1/RAGEシグナルを介したミネラルコルチコイド受容体の活性化はAKIモデルマウスの腎障害発症に関与する2023

    • 著者名/発表者名
      大塚智之、上田誠二、長澤肇、大熊輝之、中田真実、若林啓一、村越真紀、小林敬、松井孝憲、山岸昌一、合田朋仁、鈴木祐介
    • 学会等名
      第45回日本高血圧学会総会

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公開日: 2024-12-25  

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