研究課題/領域番号 |
23K07712
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
高士 祐一 福岡大学, 医学部, 講師 (50803524)
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研究分担者 |
川浪 大治 福岡大学, 医学部, 教授 (50568889)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | リン / FGFR1 |
研究実績の概要 |
リンによるFGFR1のリン酸化機構の解明に向けて、GFP-Trap法およびBio-ID(近位依存性ビオチン標識)法を用いたLC-MS/MS解析から、リンによるFGFR1のリン酸化を媒介する因子の同定を目指している。当該年度は、GFP-Trap法に用いるGFP付加FGFR1の安定発現UMR106細胞、およびBio-ID法に用いるFGFR1のC末端に大腸菌由来のビオチンリガーゼであるbirAを付加したFGFR1の安定発現UMR106細胞の作製と、LC-MS/MS解析に用いる細胞の選定の作業を行った。 第一に、GFP-Trap法について、GFP付加FGFR1の安定発現UMR106細胞の作製には既に成功している。本細胞を用いて、細胞外リン濃度を上昇させた時に、GFP付加FGFR1に結合する蛋白をLC-MS/MSで実際に解析したのだが、候補因子の同定には至らなかった。現在原因として、蛋白抽出法が最適でないことが明らかとなっている。すなわち、膜蛋白であるFGFR1を効率よく抽出することと、GFP蛋白の機能を損なわずに抽出することの両者を同時に達成するための抽出条件について、試行錯誤を繰り返している。 第二に、同時並行で進めているBio-ID法について、FGFR1のC末端に大腸菌由来のビオチンリガーゼであるbirAを付加したFGFR1の安定発現UMR106細胞を作製に新たに成功した。以後は、細胞外リン濃度を上昇させた時に、FGFR1に位置的・空間的に相互作用を示した蛋白をビオチン化により標識し、ビオチン-アビジン結合を利用して精製、LC-MS/MS解析に持ち込むことを進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の、GFP-Trap法およびBio-ID法に用いるGFP付加FGFR1の安定発現UMR106細胞、およびFGFR1のC末端に大腸菌由来のビオチンリガーゼであるbirAを付加したFGFR1の安定発現UMR106細胞の作製には、当該年度までに成功している。さらに、前者のGFP-Trap法については、実際にLC-MS/MS解析を複数回実施するに至っており、概ね計画通りに進捗しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
GFP-Trap法について、膜蛋白であるFGFR1を効率よく抽出することと、GFP蛋白の機能を損なわずに抽出することの両者を同時に達成するための抽出条件に関する試行錯誤を今後も継続していく。Bio-ID法について、作製に成功したFGFR1のC末端に大腸菌由来のビオチンリガーゼであるbirAを付加したFGFR1の安定発現UMR106細胞を用いて、細胞外リン濃度を上昇させた時に、FGFR1に位置的・空間的に相互作用を示した蛋白をビオチン化により標識し、ビオチン-アビジン結合を利用して精製、LC-MS/MS解析を行う。TMT(tandem mass tag)法を用いて定量解析し、得られた候補蛋白の優先順位付けを行う。次いで、siRNAにより各候補因子をノックダウンし、real-time PCRによるリン応答性のGalnt3遺伝子の発現変化を指標に、候補因子を絞り込む。絞り込んだ候補因子について、リン応答性のFRS2αおよびERKのリン酸化への関与についてWestern blottingにより確認する。最終的に、FGFR1のリン酸化への関与をLC-MS/MS解析で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に用いる特殊細胞の作製が比較的速やかに進捗したため、細胞培養試薬に関する費用が抑えられた。また、LC-MS/MS解析およびマウスを用いた動物実験の進捗が遅れたため、蛋白精製・解析試薬および実験用マウス飼料、組織学的解析試薬に当てていた費用も抑えられた。これらの費用は翌年度に同様の内容で使用する計画とする。
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