研究課題/領域番号 |
23K07744
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
千貫 祐子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (00294380)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アニサキスアレルギー / 抗原特異的IgE検査 / 好塩基球活性化試験 / ウェスタンブロット法 / 二次元電気泳動 / 抗原同定 |
研究実績の概要 |
魚類摂取後にアレルギー症状を呈した患者について、アニサキス特異的IgE検査(CAP-FEIA法)とアニサキス抽出液を用いた好塩基球活性化試験(CD203c発現定量)を実施し、両者の関係を検討した結果、アニサキス特異的IgEがクラス2以上の患者のほとんどが好塩基球活性化試験でCD203c発現増強を認めた。アニサキス特異的IgEがクラス0の患者の平均年齢(mean±SD)は36.8±16.6歳で、好塩基球活性化率の平均(mean±SD)は2.01±2.44、クラス2の患者の平均年齢は58.8±21.0歳で、好塩基球活性化率の平均は87.18±32.13、クラス3の患者の平均年齢は71.1±11.3歳で、好塩基球活性化率の平均は109.32±13.49であった。これらの結果より、アニサキス特異的IgE値(クラス)は年齢に従って上昇していることが判明した。 また、アニサキス特異的IgE値の高い症例ほど好塩基球活性化試験におけるCD203c発現増強が認められ、アニサキス特異的IgE検査の感度は比較的よいと考えられた。 さらに、アニサキスアレルギーと診断した15名について、ウェスタンブロット法にてアニサキス水溶性タンパク質と患者血清IgEの結合解析を実施した結果、患者ごとにIgEが結合するタンパク質の分子量が様々であり、このことが、アニサキスアレルギーが即時性に現れたり遅発性に現れたりする原因であること、また生の魚類のみでアレルギーを発症する患者と加熱魚類でもアレルギーを発症する患者が存在することに関与しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、まずアニサキス抗原特異的IgE値測定とアニサキス抽出液を用いた好塩基球活性化試験 (CD203c発現定量)を行うことによって、非特異的な反応を除外し、真のアニサキスアレルギー患者を抽出し、そのIgEが反応するタンパク質をプロテオミクス解析によって同定することにより、既存のアニサキスアレルゲンの実際の有症患者での抗原性を明らかにするとともに、新規アレルゲンの解明にも寄与することを目的としており、これまでに抗原特異的IgE検査、好塩基球活性化試験、ウェスタンブロット法にて、アニサキスアレルギー患者の診断および原因タンパク質の分子量までは既に同定しており、概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
現在までのところ、島根大学皮膚科でアニサキスアレルギーと診断し得た患者は約20名であり、アニサキスのアレルゲンコンポーネントがこれまでに16種類報告されていることを考慮すると、対象患者数が少ない可能性がある。より多くのアレルゲンコンポーネントを同定して、患者背景から発症機序を明らかにするために、アニサキスアレルギー患者の集積について今後多施設共同での血清収集を行う予定である。また、アニサキスアレルギー患者の原因抗原タンパク質を同定するために、アニサキスタンパク質に関する二次元電気泳動を行い、関連スポットを抽出する。その後、これらを質量分析にかけ、マスリストをMASCOTソフトウェアを用いて検索する。推定タンパク質のアミノ酸配列を解析し、塩基性局所アラインメント検索ツール (BLAST) ‐N 19を用いて相同性検索を行い、既存の抗原および新規抗原についての同定を行う予定である。 さらに、アニサキスアレルギーの成立には魚類の摂取状況が関与している可能性があり、このためアニサキスアレルギーの有病率には地域差がある可能性がある。この点についても併せて解析を行なっていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までのところ、島根大学皮膚科でアニサキスアレルギーと診断し得た患者は約20名であり、解析対象患者数が大幅には増えなかったため、試薬などの追加購入をしなかった分、今年度に余剰金が出ました。次年度は多施設共同で血清収集を行う予定ですので、対象患者数が大幅に増える見込みで、次年度に試薬などの追加購入を行うために次年度使用額が生じました。次年度使用額に関しましては、当初の予定通り、試薬や免疫ブロット用ゲルやAllergenicity kitを購入するために使用する予定です。
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