研究課題/領域番号 |
23K07746
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牧野 雄成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00433037)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 全身性強皮症 / 長鎖ノンコーディングRNA / 線維化 / 皮膚線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
全身性強皮症は、皮膚の線維化を主症状とする自己免疫疾患であり、免疫異常、血管異常、線維化が複雑に病態に関与し、治療への反応が悪いことが多く、最も難しい膠原病とも言われる。線維化の主因である、線維芽細胞からの過剰な細胞外マトリックス産生の機序を解明することは、治療応用にもつながる重要な研究課題である。全身性強皮症は単一の遺伝子が発症に関与する疾患ではなく、複数の遺伝因子を背景に,環境因子が加わることで免疫細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞などに形質変化をきたし,自己抗体の出現など疾患の表現を生じてくる。全身性強皮症のような多因子疾患の病因には、ゲノムDNAの高次構造の修飾や,ノンコーディングRNAといった「エピジェネティクス」な変化が病態に関与することが推測される。そこで本研究では、ノンコーディングRNAの中でも長鎖ノンコーディングRNAと疾患との関連に着目した。本研究の目的は、全身性強皮症の皮膚線維芽細胞における長鎖ノンコーディングRNAの発現異常と、その発現異常が過剰な細胞外マトリックス産生に関与するメカニズムを探索するというものである。結果、長鎖ノンコーディングRNAのSFTA1Pは、全身性強皮症の皮膚線維芽細胞で上昇していることをreal-timePCR法で見出した。このSFTA1Pを過剰発現させた健常人由来の線維芽細胞では、細胞外マトリックスのCTGFの発現が亢進していた。また、強皮症由来の線維芽細胞で、SFTA1Pを抑制させると、CTGFの発現は抑制された。CTGFは、これまで全身性強皮症の線維化組織や皮膚線維芽細胞で発現上昇が報告されている細胞外マトリックスである。全身性強皮症の皮膚線維芽細胞では、SFTA1Pの過剰発現を介して、CTGFといった細胞外マトリックスの過剰産生に関与していると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
皮膚線維芽細胞を用いたin vitroの実験については、概ね実験計画通りに進行している。SFTA1Pトランスジェニックマウス作成については、ベクターの設計での遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
全身性強皮症の線維芽細胞で発現が上昇しているSFTA1Pが、どのようにCTGFの発現を制御しているか実験をすすめていく予定である。また、皮膚線維芽細胞の機能に、SFTA1Pがどのように関与しているかについて、SFTA1Pの過剰発現細胞や抑制細胞を用いて、細胞遊走や細胞増殖の実験を行っていく。長鎖ノンコーディングRNAは、microRNAの吸着などを介して標的とするmRNAの機能を抑制していることが知られている。そこで、CTGFのmRNAを負に制御し得るmicroRNAを探索し、それらのmicroRNAのなかでSFTA1Pが吸着できるmicroRNAに着目していく。これらのmicroRNAは、実際に細胞内でCTGFの発現を抑制するのであれば、これらのmicroRNAを吸着するSFTA1Pは、CTGFの過剰発現をmicroRNAを介して行っていることを見いだせる可能性がある。SFTA1Pの過剰発現の機能についてのin vivoの検討は、線維芽細胞特異的にSFTA1Pが過剰発現される、トランスジェニックマウスの作成を行うことですすめていく。
|