研究課題
ホウ素中性子捕捉療法(Boron NeutronCapture Therapy; BNCT)は、ホウ素を取込ませた腫瘍へ中性子を照射し、ホウ素と中性子の核反応によりがん細胞を破壊する次世代の化学放射線療法である。皮膚血管肉腫はタキサン系抗癌剤による化学療法と放射線療法が標準的な治療であるが、皮膚科領域では最も予後不良である。免疫チェックポイント阻害薬とBNCTはそれぞれ皮膚血管肉腫に対する臨床試験が進んでいるが、その効果は限定的であることが予想される。我々はBNCTによる腫瘍抗原(免疫増強因子)の放出と免疫チェックポイント阻害薬併用によるアブスコパル効果という視点から、BNCT複合免疫療法(BNIT: Boron Neutron ImmunoThrapy)の開発に挑戦する。本研究は①BNCTによる細胞レベルの免疫誘導因子の探索と②マウスモデルによる抗PD-1抗体+BNCTの併用実験を行う。皮膚血管肉腫に対してBNCT複合免疫療法が新規の標準治療をなることをめざして、前臨床試験データ収集に努める。2023年度はBNCTによる細胞レベルの免疫誘導因子の探索を行っている。
3: やや遅れている
血管肉腫細胞株へのBNCTによる分泌因子の検討(in vitro)血管肉腫細胞株(ISOS-1)培養中にBPAを取り込ませた後、チューブへ細胞を移し、BNCTを行い、再度培養を行う。細胞生着後6時間、24時間後に細胞上清液を回収し、2D-PAGE/MS(2次元電気泳動. 質量分析(MS)プロテオミクス解析)を行った。候補となる免疫増強因子に関しては、ELISAにて定量評価した。さらに、同じ細胞株を用いてX線放射線照射後の免疫誘導因子の比較検討を行った。このin vitro実験でBNCTによる免疫増強因子となる興味深い結果を得た。
2024年度は血管肉腫マウスモデルでの抗PD-1抗体+BNCTの治療効果検証を行う予定である。BALB/cマウスに血管肉腫細胞(ISOS-1)を背部2か所に移植後4、7日目に抗PD-1抗体を投与する。8日目にBPAを用いたBNCTを1か所に照射し、1か所は遮光する。さらに10、13日目に抗PD-1抗体を投与する(右図)。経時的に2か所(BNCT照射部と非照射部)の腫瘍体積をコントロール群、抗PD-1抗体群、BNCT群、抗PD-1+BNCT併用群の4群で比較検討する。
2023年度には血管肉腫マウスモデルへのBNCTによる免疫因子の検証と抗PD-1抗体治療 (in vivo)による京都大学複合原子力科学研究所での動物照射に着手できず、予算を次年度に持ち越すこととした。
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