研究課題/領域番号 |
23K07775
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
小幡 誉子 星薬科大学, 薬学部, 教授 (20260979)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 皮膚角層 / 細胞間脂質 / ラメラ構造 / 放射光X線回折 / 赤外分光 |
研究実績の概要 |
まず、ヒトおよびマウス角層のX線回折実験および赤外分光実験を行った。X線回折実験から、すでに報告されているようにいずれの角層でも、長周期ラメラ、短周期ラメラならびに六方晶、直方晶が観察された。マウス角層では長周期ラメラが非常に明確に認められたが、ヒト角層の長周期ラメラの一次回折は不明瞭で、二次回折は短周期ラメラの一次回折と重畳しており、データ解析にはピーク分離等の手法が必要だった。角層の赤外分光実験では、これまでの実験で、とくに脂質の炭化水素鎖に由来するメチレンの対称および逆対称伸縮振動に関する報告が中心だったが、この研究では、アミドⅠやアミドⅡの吸収領域にも着目した。セラミドのスフィンゴイド塩基に由来する吸収も重なっているが、角層内では質量比でおよそ9割を角層細胞が占めており、アミドの吸収はソフトケラチンの状況をよく反映するものと考えられる。角層の温度を上昇させると、αヘリックスが減少するとともに、ランダムコイルが増加する可能性が示唆された。さらに、脂質の炭化水素鎖に由来するメチレンの対称および逆対称伸縮振動については、温度の変化に対しては、対称伸縮振動のほうが鋭敏である結果が得られた。また、光学活性セラミドを添加した脂質モデルでは、これまでのセラミド:コレステロール:遊離脂肪酸のモル比を1:1:1としたモデルから、セラミド:コレステロールが1:1とすることでさらに単純化して、分子間相互作用を明確にすることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光X線回折実験、放射光赤外分光実験ともにSPring-8やKEK-PFでの申請課題が採択され、必要なビームタイムを確保することができている。また、実験で得られた測定プロファイルについて、種々の解析を試み、新しい解析手法を見出すに至っている。これらの手法をさらに発展させて、角層微細構造に関するあらたな知見が得られると考えており、製剤開発へのアプローチにつながるものである。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている角層微細構造のあらたな解析手法の発展に努めるとともに、疾患皮膚角層への適用を試みる。また、脂質モデルの成分比を検討することにより、疾患皮膚角層の状態を再現できるモデルの構築を試みて、製剤開発に重要な要因の探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を効率的に使用することができたため次年度に繰り越し、次年度において同様に消耗品の購入に充てる予定である。
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