研究課題/領域番号 |
23K07790
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
宮川 史 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00346024)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / Type 2炎症 / 単球 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスを用いた研究で、Ly6Chigh単球由来のI型IFNが抗体産生に、Ly6Chigh単球からの炎症性サイトカインが糸球体腎炎の発症に関与していることを報告した。Ly6Chigh単球は、他の炎症性疾患においても病態に関与している可能性が考えられることより、アトピー性皮膚炎 (AD)モデルマウスを用いてLy6Chigh単球の役割を検討した。 野生型マウスにADを惹起すると、皮膚病変部位には、好塩基球等他のtype 2炎症に関与する免疫細胞よりも多くのLy6Chigh単球の浸潤がみられたことより、Ly6Chigh単球がADの病態に関与している可能性が考えられた。そこでLy6Chigh単球が組織に浸潤しないCCR2欠損マウスで検討したところ、このマウスでは皮膚症状が増強した。さらにLy6Chigh単球からI型IFNが産生されないIRF7欠損マウスでも皮膚症状が増強したことより、Ly6Chigh単球由来のI型IFNがType 2炎症を抑制している可能性が考えられた。この可能性は以下の結果でも裏付けられた。すなわち、抗IFNa抗体を野生型マウスに投与しI型IFNを抑制すると、ADの症状は増強した。一方、polyICを野生型マウスに投与することでI型IFNを増強すると、ADの症状は軽減した。さらにIRF7欠損マウス由来のLy6Chigh単球を、CCR2欠損マウスに投与すると、野生型マウス由来のLy6Chigh単球を投与した場合より、ADの症状は増強した。骨髄細胞を用いたin vitroの実験でも、I型IFNを添加することで好塩基球の分化および生存が抑制されることが明らかとなったことより、Ly6Chigh単球由来のI型IFNがType2炎症を抑制することを証明できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に進んでおり、第1報を国際誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
野生型、IRF7欠損マウスにADを誘発し、Ly6Chigh単球を分離し、Ly6Chigh単球が発現している遺伝子をmicroarrayあるいはsingle cell RNA sequencingで網羅的に解析する。さらにType 1免疫応答を起こすSLEマウスモデル、Type 3免疫応答を起こす乾癬モデル等の異なる免疫応答の種類を持つモデルマウスからLy6Chigh単球を分離し、microarrayを行うことでLy6Chigh単球が疾患特異的な形質を持っているかを検討する。
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