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2023 年度 実施状況報告書

薬剤排出機構の制御を軸に展開する抗真菌薬耐性皮膚糸状菌症治療戦略の確立

研究課題

研究課題/領域番号 23K07793
研究機関帝京大学

研究代表者

山田 剛  帝京大学, 付置研究所, 准教授 (80424331)

研究分担者 加納 塁  帝京大学, 付置研究所, 教授 (00318388)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード皮膚糸状菌 / 皮膚真菌症 / 薬剤耐性 / 薬剤排出トランスポーター / 制御因子
研究実績の概要

近年、皮膚糸状菌の感染によって起こる白癬において薬剤耐性菌の蔓延が顕在化している。本研究では、白癬の中核治療薬の1つであるアゾール系抗真菌薬(アゾール)の耐性菌問題について、主な原因となっているアゾールを特異的に排出する薬剤排出トランスポーター(ポンプ)の過剰発現の制御を軸とする解決策の策定を目標に、国内で発生する白癬の原因菌の大半を占めるTrichophyton rubrumでアゾール排出の中核的機能を果たしているポンプの特定とポンプの制御の分子基盤の解明に取り組んでいる。
今年度は、白癬菌T. rubrumの臨床分離株の収集とアゾール耐性株の分離を進めると共に、申請者らが見出したアゾール耐性株TIMM20092を用いて、アゾール排出ポンプの制御に関与する分子の同定を進めた。TIMM20092では、ATP binding cassette型薬剤排出ポンプMDR2やMDR3の過剰発現が確認されている。Candida属酵母やAspergillus属糸状菌などの病原真菌で報告されているアゾール排出ポンプの制御因子(遺伝子)の情報を基に、MDR2やMDR3の制御に関与している可能性のある3つの遺伝子(TERG_01042, TERG_00615, TERG_02061)を見出した。そして、ゲノム編集技術を用いて、TIMM20092のゲノム中に存在するこれら3つの遺伝子の破壊を進めた。すでにTERG_01042の破壊株作製が終了しており、残り2つの遺伝子の破壊株作製を進めると共に、TERG_01042破壊株の表現型解析(アゾール感受性解析等)を進めている。
他方、白癬菌T. rubrumの臨床分離株の収集とアゾール耐性株の分離を進め、複数のアゾール耐性株を分離した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

臨床上最も重要な白癬菌であるTrichophyton rubrumでは、Candida属酵母やAspergillus属糸状菌のような安定した遺伝子操作の系が確立されておらず、また遺伝子操作(遺伝子破壊)の効率も低いことが知られている。そのような背景のもとで、白癬菌では新たな遺伝子操作技術といえるゲノム編集技術(CRISPR/Cas9システム)の導入を試みることになったため、遺伝子破壊株の作製にかなりの時間と困難を伴うことが予想された。しかしながら、1つ目のターゲット遺伝子であるTERG_01042について、十分な形質転換効率は得られなかったものの破壊株が得られており、残り2つのターゲット遺伝子の破壊株作製もすでに開始している。
他方、収集を行ったT. rubrumの臨床分離株の中からアゾール耐性株が得られている。
以上のことから、本研究は概ね計画通りに進んでいると考える。

今後の研究の推進方策

2024年度も、主にアゾール耐性株TIMM20092を用いて、アゾール排出ポンプの制御に関与している分子の同定を進めていく。今年度前半で、MDR2やMDR3の制御に関与している可能性のある残り2つの遺伝子(TERG_00615, TERG_02061)の破壊株作製と、TERG_01042破壊株を含む3つの遺伝子破壊株の表現型解析(主にアゾール感受性解析)を終えたいと考えている。そして、遺伝子破壊株の表現型解析の結果を基に、これら3つの遺伝子の復帰株(revertant)作製、そしてMDR2やMDR3をはじめとする薬剤排出ポンプの遺伝子発現レベルの解析を実施したいと考えている。
他方、T. rubrumの臨床分離株の収集とアゾール耐性株の分離を進めた結果、現在までにTIMM20092を含む複数株のアゾール耐性T. rubrumが得られている。これらのアゾール耐性株の中から、アゾール排出ポンプの過剰発現が認められるものをスクリーニングし、アゾール排出の中核的機能を果たしているポンプの特定を進める。それと並行して、アゾール排出ポンプの過剰発現が認められるアゾール耐性株のスクリーニングをさらに進めていきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

先に述べたように、臨床上最も重要な白癬菌であるTrichophyton rubrumでは、Candida属酵母やAspergillus属糸状菌のような安定した遺伝子操作の系が確立されておらず、また遺伝子操作の効率も低いことが知られている。そのような背景のもと、白癬菌では新たな遺伝子操作技術といえるゲノム編集技術の導入を試みることになったため、遺伝子破壊株の作製にかなりの時間と困難を伴うことが予想された。しかしながら、TERG_01042破壊株の作製が予想以上に順調に進み、T. rubrumのゲノム編集システムを確立することができた。本システムを用いることで、残りのターゲット遺伝子の破壊株作製もスムーズに進められるものと考える。
他方、アゾール耐性株の分離も順調に進んでいる。
以上の理由から、費用を大幅に抑制することができた。

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公開日: 2024-12-25  

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