研究課題/領域番号 |
23K07799
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
中妻 彩 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (30446075)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / IL-13 / CD70 / T細胞 / IgE / アレルギー / エピジェネティクス / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)の発症には、主にTh2細胞が産生するIL-13が中心的役割を担うが、Th1/Th17/Th22細胞もその病態形成や慢性化・重症化に関与する。申請者らは、IL-6依存的に誘導される新規IL-13産生Th細胞が、Th1/Th17応答やB細胞の抗体産生を促進する共刺激分子CD70を発現していることを見出した。そこで、この新規Th細胞の本態を突き止め、その分化制御機構と、ADの病態形成における役割を明らかにするため、本年度はDNAメチル化による当該Th細胞の分化制御の解析と、2,4-dinitrofluorobenzene (DNFB) 誘導ADマウスのTh細胞の解析を行った。 (1) AD患者では、血清IgE濃度と、末梢血単核球のDNA methyltransferase 1(DNMT1)遺伝子発現低下およびIL-13遺伝子発現亢進に相関性があることが報告されている。IL-6存在下で分化誘導したTh細胞(IL-6-Th細胞)では、抗CD3抗体+抗CD28抗体刺激後、IL-13とCD70の遺伝子発現亢進と、DNMT1遺伝子の発現低下が認められた。一方、IL-4存在下で分化誘導したTh2細胞では、IL-13遺伝子の発現亢進は認められたが、CD70遺伝子はほとんど検出されず、また、DNMT1遺伝子の発現低下も見られなかった。IL-6-Th細胞をIL-13産生とCD70発現の有無で分画して解析を行った結果、IL-13産生細胞はDNMT1遺伝子の発現が低い傾向が認められたが、CD70発現との相関性は見出すことができなかった。DNMT阻害薬5-azacytidineは、IL-6-Th細胞のIL-13産生やCD70発現を増強したが、Th2細胞ではそれらの効果は認められなかった。 (2) IL-13遺伝子欠損マウスまたはIL-13-EYFPレポーターマウスを用いてDNFB誘導ADマウスを作製した。ADマウスの血中IgE値は、IL-13遺伝子欠損によって有意に低下した。AD病巣部の所属リンパ節由来Th細胞は、IL-4よりもIL-13を多く産生し、また、IFN-γ、IL-17、IL-22産生も検出された。皮膚炎を発症した耳介には、CD70陽性IL-13産生Th細胞の浸潤が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNFB誘導ADマウスの作製スケジュールを試行錯誤し、皮膚病巣部のTh細胞の解析方法を確立することができた。また、DNAメチル化を手がかりに、CD70陽性IL-13産生Th細胞の分化制御メカニズムの解明へと一歩前進した。Th2細胞ではDNAメチル化阻害下でもCD70発現が誘導されなかったことから、DNFB誘導ADマウスの皮膚病巣部で検出されたCD70陽性IL-13産生Th細胞は、従来のIL-13産生Th細胞であるTh2細胞ではなく、IL-6存在下で分化誘導されたIL-13産生Th細胞である可能性が高まった。以上の成果から、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今回使用した5-azacytidineは、細胞増殖抑制効果が強く、DNAメチル化阻害効果のみを評価するのが困難であった。細胞毒性を示さないDNAメチル化阻害剤が入手できるようになったため、CD70陽性IL-13産生Th細胞の分化誘導や機能発現に与える影響を検証する。 (2)ビタミンAの活性代謝産物であるレチノイン酸は、IL-6によるIL-13産生Th細胞の分化誘導を抑制することがわかっている。そこで、レチノイン酸によるDNMT1およびRFX1を介したDNAメチル化制御について検証する。 (3) CD70陽性IL-13産生Th細胞によるIgE抗体産生誘導メカニズムを解明するため、共培養系の確立や、DNFB誘導ADマウスの濾胞性ヘルパーT細胞の解析に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)今年度に得られた成果を元に、次年度以降は各種中和抗体や遺伝子改変マウスによる検証を進めることを想定して、物品費の使用を控えた。
(使用計画)マウスの購入費および飼育費、細胞調製や培養に必要な試薬やプラスチック器具、ELISA、フローサイトメトリー、タンパク質発現解析で用いる抗体をはじめとする各種試薬類、mRNA発現解析やエピジェネティック解析に用いる酵素をはじめとする各種試薬類などの購入費に充てる。2024年度後半は大学キャンパスの移転に伴い、研究に費やす時間や環境も不十分となるため、遺伝子発現解析などは受託サービスの利用も視野に入れる。
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