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2023 年度 実施状況報告書

炎症性細胞死のエピジェネティック制御と骨髄異形成症候群における病因論的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K07806
研究機関東京大学

研究代表者

中島 やえ子  東京大学, 医科学研究所, 助教 (50749497)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードPRC1.1 / 炎症性細胞死 / インフラマソーム / MDS / ASC
研究実績の概要

申請者らは、ポリコーム群複合体PRC1.1の構成因子であるPCGFやBCORの遺伝子欠損マウス(Pcgf1 cKO、Bcor cKO)の骨髄において、LPS投与により細胞死が誘導されることを見出した。本研究では感染や炎症による細胞死誘導にPRC1.1がどのような生理的役割を果たすのかを明らかにし、炎症性細胞死のエピジェネティック制御機構を明らかにする。またPRC1.1の機能低下は骨髄異形成症候群(MDS)の発症・進展に関与するが、一方で、MDSにおいてインフラマソームの活性化に伴う炎症性細胞死(パイロトーシス)が促進されているとの報告がされている。そこで骨髄細胞の炎症性細胞死の促進がMDSの病態の形成や進展に果たす役割を解明する。
まずPcgf1 cKO 骨髄細胞を用いてLPS投与前後の遺伝子発現プロファイルを取得した。Pcgf1 cKOでは好中球におけるNlrp3やIl1bといったパイロトーシス関連遺伝子群の発現誘導が亢進する一方で、単球ではむしろ減弱していた。また、細胞死の経路の同定のために炎症性細胞死であるパイロトーシスとネクロトーシスに注目し、パイロトーシス関連因子Gsdmdまたはネクロトーシス関連因子MlklとPcgf1との2重遺伝子欠損マウスを作製しLPS投与実験を行った。これらのマウスで著しい細胞死誘導がレスキューされることを期待したが、予想に反してレスキューされることはなかった。現在までにPcgf1 cKOで観察される細胞死の経路や種類の同定はできていない。
MDSとインフラマソームの活性化との関わりに関してはCBLΔE8-9/RUNX1S291fsを遺伝子導入したMDSモデルとインフラマソソーム構成因子ASCのKOマウスを組み合わせることにより解析を行なった。ASC KOマウスでは致死性のMDSに抵抗性を示し、有意に生存期間を延長することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

残念ながらPcgf1 cKOで観察される細胞死の経路や種類の同定はできていないが、MDSとインフラマソームの活性化との関わりに関しては解析を進めることができた。インフラマソームの活性化を阻害すると致死性のMDSに抵抗性を示し、有意に生存期間を延長することが明らかになった。この結果はMDSの新たな治療標的としてのインフラマソームの可能性を提示するものである。

今後の研究の推進方策

感染や炎症による細胞死誘導にPRC1.1がどのような生理的役割を果たすのかを明らかにするために、Pcgf1 cKOで誘導される著しい細胞死の種類と誘導経路を明らかにしていきたいと考えている。
Pcgf1 cKOでは骨髄球分化が促進されており、野生型とは異なる骨髄球の構成を維持している。この骨髄球分化の違いが細胞死に関与している可能性を考え、Mac1陽性細胞を用いたscRNA-seqを行う予定である。また、細胞死の種類に関しても今年度注目したパイロトーシスとネクロトーシスだけでなく、Netosisなど他の炎症性細胞死にも注目し解析を進めていく予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Polycomb repressive complex 1.1 coordinates homeostatic and emergency myelopoiesis2023

    • 著者名/発表者名
      Nakajima-Takagi Yaeko、Oshima Motohiko、Takano Junichiro、Koide Shuhei、Itokawa Naoki、Uemura Shun、Yamashita Masayuki、Andoh Shohei、Aoyama Kazumasa、Isshiki Yusuke、Shinoda Daisuke、Saraya Atsunori、Arai Fumio、Yamaguchi Kiyoshi、Furukawa Yoichi、Koseki Haruhiko、Ikawa Tomokatsu、Iwama Atsushi
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 12 ページ: -

    • DOI

      10.7554/eLife.83004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Polycomb repressive complex 1.1 negatively regulates inflammatory cell death2023

    • 著者名/発表者名
      Takanori Fukuta,Yaeko Nakajima,Kazumasa Aoyama,Shuhei Koide, Masayuki Yamashita,Motohiko Oshima,Atsushi Iwama
    • 学会等名
      第85回日本血液学会学術集会
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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