研究実績の概要 |
STAPファミリーは、N端側にPHドメインとSH2ドメインを有し、炎症性シグナルを伝達する蛋白と結合してそのリン酸化を制御するアダプター蛋白である。申請者らを含む複数の研究グループから、リンパ球、マクロファージ細胞の中に存在するSTAP-2蛋白が、IL-2、IL-6、M-CSF、CXCL-12といったサイトカイン・ケモカインの受容体やトール様受容体(TLR)からの刺激に反応して、VAV1、STAT5、Myd88といった細胞内蛋白と結合し、細胞の遊走・浸潤、増殖、サイトカイン産生機能を調整している事が報告されている(総説:Ichii et al. Exp Hematol. 2022)。さらに最近、申請者らは、STAP-1、STAP-2がTCRシグナルの活性化にも関わっている事(Saitoh, Ichii et al. J Immunol. 2022)、慢性骨髄性白血病幹細胞の生存(Toda, Ichii et al. Oncogene, 2021)や造血ストレスに曝された骨髄の造血機能(Ichii et al. Haematologica, 2020)をSTAP蛋白が制御している事を明らかにした。 骨髄に発症する形質細胞の悪性腫瘍である多発性骨髄腫は、腫瘍細胞存在により誘導される炎症性環境にニッチ構成細胞が一律に影響を受ける事が知られている。本研究では、骨髄腫独自に形成される炎症性環境下に存在するニッチ細胞におけるSTAP蛋白の役割を明らかにする事を目的としている。
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