研究課題/領域番号 |
23K07814
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松岡 賢市 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (90432640)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 同種造血幹細胞移植 / 慢性GVHD / 閉塞性細気管支炎 |
研究実績の概要 |
本研究では、同種造血幹細胞移植後に発症する肺慢性GVHDにおける炎症局所環境の包括的理解と、これに基づく層別化治療戦略の開発を目指す。近年、慢性GVHDに対する二次治療の選択肢が増えつつあるが、特に移植後閉塞性細気管支炎をはじめとする肺GVHDについては、いまだ正確な病態が不明であり、病態に基づいた確度の高い治療法が確立されていない。この問題を解決するため、本研究では、①肺GVHDで肺移植をうける患者からの摘出肺について網羅的な病理/遺伝子学的解析を実施し、肺GVHD発症に関与する主要な免疫経路を同定し、②このメカニズムをモデル化するマウス実験系を確立する。さらに、③この肺GVHDモデルを用いた薬物投与実験を行い、慢性GVHDにおける精密医療を可能にする免疫制御アルゴリズムへ導出する。 初年度では、手術によって摘出されるヒト肺検体の確実な保存方法の最適化をはかった。すでに、ヒト臨床移植後の肺慢性GVHDに対して実施された肺移植後の摘出肺検体の保存を開始している。また、慢性GVHDおよび急性GVHDのマウス実験移植モデルにて、同種免疫反応による肺への組織損傷について評価し、適切なマウスモデルの確立へ向けて条件設定を行なっている。これらのモデルにおける制御性T細胞の動態についての解析系の調整も進捗した。これらの状況から、研究計画全体はここまでおおむね順調に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト臨床移植、およびマウス実験的移植における肺慢性GVHDの解析について、実験系の最適化が順調に進捗している。すでに、ヒト臨床移植後の肺慢性GVHDに対して実施された肺移植後の摘出肺検体の保存を開始しており、次年度ではこれらの保存検体の実際的な解析に進めていく予定である。肺慢性GVHDを発症するマウス実験的移植モデルでは、実験条件の調整から肺GVHDを再現する系の確立に着実に近づいている。これらの理由から、研究計画全体の状況はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに保存を開始しているヒト摘出肺について、次年度では網羅的解析を開始する予定である。また、ヒトの肺慢性GVHDをモデル化するマウス実験移植系を確立し、さまざまな条件設定から、肺慢性GVHD発症へのリスク因子と防御因子について、検討を行う。これと並行して、肺慢性GVHDを予防する薬剤の候補について検討を始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度では、実験系の着実な確立に向けて、細かい実験条件の調整を行うことに注力した。結果的に、網羅的な解析は、次年度以降からの開始となっている。このため、解析にかかる費用の使用は、次年度への持ち越しとなった。このため、次年度使用額が生じる結果となったが、全体の研究計画としては概ね順調な進捗と考えている。
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