研究課題
急性骨髄性白血病(AML)においてミトコンドリアの活性化は、白血病幹細胞の生存や、化学療法への耐性化に関与をしている可能性が高い。日本医科大学GS-JAML研究に登録されたAML患者の中から、変異型NPM1かつ野生型FLT3 31症例、野生型NPM1かつFLT3-ITD 79症例、変異型NPM1かつFLT3-ITD 96症例の計206症例を対象としてミトコンドリアDNAコピー数/体細胞DNAコピー数(mtDNA/nDNA)比の解析を行った。変異型NPM1とFLT3-ITDが共存するdouble mutated AML症例においてmtDNA/nDNA比が健常者の末梢血単核球と比較して1.5倍以上であったmtDNA-HIGH群は、他の群と比べて有意に予後不良であった。この結果から、FLT3-ITDおよびNPM1変異を伴うAMLの化学療法耐性化にmtDNAの変化が関与する可能性が示唆された。次に、化学療法耐性によってmtDNAに変化が生じるかどうかを評価するためにFLT3-ITD陽性細胞株(MV411)に対するシタラビン、ベネトクラクス(VEN)の少量長期暴露を行い薬剤耐性細胞株の作成を行った。VEN耐性細胞株においてアポトーシスを制御するBCL-2ファミリー分子の発現量を検討した結果、顕著なMCL-1タンパク量の増加を認めた。そこでMCL-1阻害剤S63845を投与したところ、耐性獲得前と比べ各薬剤への感受性が高くなることが確認された。これらの結果を踏まえて、VEN耐性細胞株におけるmtDNA/nDNA比と薬剤耐性獲得と相関や、FLT3-ITD陽性細胞株やBa/F3細胞にFLT3-ITDを導入した細胞でFLT3阻害剤を処理後、オルガネラ選択的オートファジー定量レポーターを用いて、マイトファジー活性の定量を現在行っている。
3: やや遅れている
2023年度中にDouble mutated AMLのうち特にmtDNA発現が高値であった症例と低値であった症例を対象としてRNAseqを行う予定であった。しかしVEN耐性細胞株やシタラビン耐性細胞株、それぞれの耐性前細胞株に対してのRNAseqを同時に行う計画に変更した。VEN耐性細胞株やシタラビン耐性細胞株の作成に時間を要したためRNAseqの実験が遅れている。
1.32症例の初発時再発時ペアー検体を対象としてmtDNA/nDNA比の解析を行い、AML再発におけるミトコンドリアの活性化の臨床的意義を検討する。2.Double mutated AMLのうち特にmtDNA発現が高値であった症例と低値であった症例を対象としてRNAseqを行い遺伝子発現プロファイルの確定しmtDNA発現の変化に関わった経路を同定する。3.VEN耐性細胞株やシタラビン耐性細胞株とそれぞれの耐性前細胞株において、RNAseqによる遺伝子発現プロファイルを行いミmtDNA発現の変化に関わった経路を同定する。4.MCL-1発現増加とmtDNA/nDNA比との関係を明らかにして薬剤耐性の機序を検証する。以上のことからAMLにおいてミトコンドリアの活性化がどのように化学療法への耐性化に関与をしているのかを明らかにし、FLT3-ITD陽性AMLの新たな治療標的を見出す。
2023年度中にDouble mutated AMLのうち特にmtDNA発現が高値であった症例と低値であった症例を対象としてRNAseqを行う予定であった。しかしVEN耐性細胞株やシタラビン耐性細胞株、それぞれの耐性前細胞株に対してのRNAseqを同時に行う計画に変更した。VEN耐性細胞株やシタラビン耐性細胞株の作成に時間を要したためRNAseqの実験が遅れている。このため2023年度の研究費を2024年度に繰り越してRNAseqを行う予定である。
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