研究課題/領域番号 |
23K07859
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植田 康敬 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30533848)
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研究分担者 |
保仙 直毅 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10456923)
西村 純一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教授 (80464246)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 寒冷凝集素症 / 補体 / 古典経路 / 抗補体薬 / 血管外溶血 / CAD |
研究実績の概要 |
寒冷凝集素症に対して、抗C1sモノクローナル抗体薬であるスチムリマブが保険承認されているが、約半数では貧血の改善が不十分で、一部全く効果を認めない患者が存在する。臨床試験データにおいて反応例と不応例でその患者背景の違いは明らかでなく、不応の原因は不明で、反応性を治療前に予測することも出来ていない。本研究は寒冷凝集素症患者における抗補体薬の反応性の違いの原因を明らかにし、スチムリマブの適正使用のための知見を得るとともに、寒冷凝集素症における補体による溶血メカニズムの詳細の解明に繋げることが目的である。Hereditary cryohydrocytosis(寒冷型遺伝性有口赤血球症)の可能性を検証するために、スチムリマブに不応の患者赤血球を洗浄後4℃で16時間静置したが、何れの症例も溶血を来さず、家族歴が無いことからHereditary cryohydrocytosisの可能性は低いものと考えられた。またC1s遺伝子多型によるスチムリマブ不応については、何れの症例もスチムリマブ投与後血清補体価(CH50)が感度以下となっていることから、C1sの遺伝子多型によるスチムリマブの結合不全の可能性は低いと考えられた。このことから当院症例におけるスチムリマブ不応は、古典経路以外(レクチン経路、第2経路)の補体経路が活性化している可能性、C1sからC3活性化の過程で、従来考えられてるものとは別の活性化系が存在する可能性、あるいは血管外溶血の程度の違いなど、補体活性化後の要因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当院で解析しているスチムリマブ不応例については、Hereditary cryohydrocytosis、C1s遺伝子多型によるスチムリマブ不応の可能性は低いと考えられため、他の機序によるスチムリマブ不応を考え、不応例における補体活性化経路を評価するための実験系の確立に取り組んだ。寒冷凝集素症患者の赤血球は、補体C3成分が沈着し、肝臓などで貪食される血管外溶血を示す。患者赤血球膜上のC3沈着を、未治療患者、スチムリマブ有効例、スチムリマブ不応例で検証するための、フローサイトメトリー法による評価方法を確立した。また寒冷凝集素であるIgMの5量体と6量体を評価する手法を、サザンブロット法で確立した。
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今後の研究の推進方策 |
寒冷凝集素症に対するスチムリマブ不応例について、古典経路以外の補体活性化経路の評価を行う。具体的には患者血清中の補体因子を測定し、どの補体経路が活性化しているかを評価する。また補体活性化経路に反応例、不応例で違いが無い場合、血管外溶血の程度が異なる可能性がある。血管外溶血の評価についても実験系を確立させ、評価を行う予定である。
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