研究課題/領域番号 |
23K07887
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研究機関 | 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部 |
研究代表者 |
大村 浩一郎 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 臨床免疫研究部 部長 (40432372)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | I型インターフェロン / 全身性エリテマトーデス / ISG signature score / 疾患活動性 |
研究実績の概要 |
SLEの活動性と関連する遺伝子を明らかにするために、SLEの治療前活動期の患者14例、低疾患活動性患者10例、寛解患者10例と健常者20例の全血RNA-Seqを行った。まずはSLEの活動性と強く関連すると言われているtype I interferon (IFN)-stimulated gene (ISG) signatureに注目し、その代表する4つの遺伝子(IIFI27, IFI44, IFI44L, RSAD2)の遺伝子発現を標準化し足した数値をISG-signature scoreとして算出した。このscoreと疾患活動性を表すSLEDAIの相関を求めると強い相関を示した。次に疾患活動性をもっともよく表す遺伝子の組み合わせを明らかにするために、これまでに報告されている12種類のISG signature geneの組み合わせを用いて、SLE疾患活動性(SLEDAI)との相関係数およびそのp値を求めると、上述の4遺伝子の組み合わせが最も低いp値を示し、中には全く相関しない組み合わせもあった。 また、治療前の患者群のscoreは低疾患活動性の患者群より有意に低値であったが、寛解患者と低疾患活動性患者の間ではscoreに差がなかった。一方、健常者と比較すると寛解患者のscoreは有意に高く、このことからこの4つの遺伝子は活動性とも関連する(disease activity genes)が、疾患を規定している遺伝子(disease state genes)でもあることがわかった。 さらに、ISG-signature scoreを治療前後(治療前と治療1か月後)で比較したところ、7例は明らかに低下(25%以上)、8例はほとんど低下しなかった(20%以下)。低下群と非低下群を規定している要因を現在検索中であるが、グルココルチコイドの初期量と1か月後の量が一因となっているようであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インターフェロンシグニチャに関する実験は当初の予定以上に進行しているが、SLE寛解患者と健常者との遺伝子発現の比較は少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、インターフェロンシグニチャのすべての遺伝子の組み合わせで最も疾患活動性と相関するシグニチャを検討する。同様に罹患臓器別や血清学的マーカー(補体や抗DNA抗体)と最も相関するシグニチャも検索する。また、そのvalidationを京都大学もしくは公共データベースを用いて行う。 次に、寛解患者と健常者で発現の異なる遺伝子群(differentially expressed genes: DEG)を明らかにし、どのような遺伝子が正常化しにくいのかを明らかにする。そこから分子的寛解の度合いを個々の患者で確定することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度RNA-Seqなどの高額費用が必要となるため。RNA-Seq 1検体 50,000円 x 20検体 = 1,000,000円使用予定。
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