研究課題/領域番号 |
23K07902
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
福家 辰樹 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, アレルギーセンター, 診療部長 (10535842)
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研究分担者 |
穐山 浩 星薬科大学, 薬学部, 教授 (10260259)
鈴木 美成 国立医薬品食品衛生研究所, 食品部, 室長 (40469987)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 定量的リスク評価 / アレルギー症状誘発確率 / 給食 |
研究実績の概要 |
初年度である今年度は研究計画に従い、①食物アレルギー患者・家族からのアンケート調査、および②学校や保育所の関係者への実態調査、ニーズ把握および課題抽出、加えて③調理器具サンプルのパイロット測定を実施した。①として、神奈川県内患者会の協力により、県内の保育所・こども園・幼稚園職員へWEB調査を実施(令和5年12月から令和6年2月)したところ、「食物アレルギーで困っていることはありますか?」という設問で「有る」と答えた施設のうち、緊急時対応が58.3%、安全管理が41.7%であり、症状出現に際し適切な緊急時対応を取れるよう研修等の必要性と合わせて、安全な給食管理が求められている実態が把握された。また、②においては、学校養護教員、教育委員会、保健所職員等のアレルゲンクロスコンタクトを調査する有識者との面談を繰り返した。結果、ある都内の教育委員会において「文部科学省:学校給食における食物アレルギー対応指針」P21の「弁当対応の考慮対象」を検討すべき児童生徒として、「4. 食器や調理器具の共用ができない」「5.油の共用ができない」という項目を主治医に確認する必要性について現場の混乱が散発していた。アレルギー対応専用の調理室や調理器具の用意はないこと、揚げ物に使用する油は3回ほど再利用しており原因食物が含まれる料理を揚げた後の油は使用出来ないことなどの問題点が浮き彫りにされ、これをもとに次年度の評価対象サンプルとして設定された。最後に③サンプル解析のパイロット調査として、星薬科大学薬品分析化学研究室でアレルゲン濃度測定を実施した。具体的には、「オムレツの調理に用いた調理器具等を洗浄せずケチャップパスタの調理に用いたとき、ケチャップパスタに残留したアレルゲンを定量する」等として、調理器具に残留する試料をモリナガ FASPEKエライザⅡ卵を用い、測定する実験系を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に従い、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降においては、上記の検討において設定された評価対象サンプル、つまり「アレルゲンの混入が否定出来ない食品」等の試料について複数施設より収集する。試料中の特定原材料(卵/牛乳/小麦/甲殻類/落花生)に関するアレルゲン濃度の推計としては、収集試料の各濃度を、特定原材料ELISAキットを使用して定量し、その結果を尤度分布とする。実際の学校給食現場のサンプルのほか実験的に試料を作成し、揚げ油を複数回使用した場合のモデル等を作成する。地方自治体研究機関等で実施されるアレルゲン濃度の検査結果等に利用可能な情報があればそれを事前確率分布とし、実験データに基づく尤度分布を用いてベイズ推定により事後予測分布を得た後に、乱数を発生させる2次元モンテカルロシミュレーションにより推定する。加えて、国立成育医療研究センターに即時型食物アレルギーのために食物経口負荷試験を行った患者の臨床データ(2014年から2023年の10年間)より、ベンチマークドーズ法を用いて特定原材料である卵・牛乳・小麦・甲殻類・落花生におけるアレルギー症状誘発確率を推計する。得られた確率密度分布と推定摂取量から「アレルゲンの混入が否定出来ない食品」のアレルゲン摂取量分布を推定する(摂取量データは学校や保育所における個々の配膳で決められた盛付け量等に従う)。それぞれの食品1回当たり推定アレルゲン曝露量から、当該食物アレルギー集団におけるアレルギー症状誘発リスクを定量的に推計し、学校・保育所の給食等におけるリスク管理制度に対する臨床面からの科学的検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた学会参加費および旅費については当該年度からの支出を控えた。サンプル解析に関わる諸経費について支出を控え、次年度以降に加算し購入を予定した。
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