研究課題/領域番号 |
23K07917
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
井関 將典 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30532353)
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研究分担者 |
向井 知之 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00454421)
森実 真 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (80423333)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 全身性エリテマトーデス / サイトカイン / EBI3 |
研究実績の概要 |
本研究ではサイトカインの構成要素EBI3がどのような分子機構でアトピー性皮膚炎、全身性エリテマトーデス(SLE)等の慢性免疫疾患を制御しているかを明らかにすることを目的としている。予備実験により我々が独自に作製したEbi3欠損(KO)マウスではアトピー性皮膚炎用の皮膚炎症が野生型(WT)マウスと比較して亢進しているという結果が得られていた。予備実験時よりマウスの匹数を増やして同じ実験を行った。WTおよびKOマウスの耳にビタミンD誘導体であるMC903を毎日塗布し、アトピー性皮膚炎様の炎症を誘導した。毎日耳の厚さを測定し炎症の程度を比較したところ、WTとKOマウスの間に有意な差は見られなかった。以前の結果はマウス間のばらつきが群間の差として現れてしまった可能性が考えられる。またTLR7リガンドであるイミキモド(IMQ)を耳に週3回、8週間塗布するSLEモデル実験では、予備検討時にWTマウスで見られる脾腫がKOマウスでは軽減するという結果が得られていた。再実験の結果、前回と同様にWTマウスで誘導された脾腫がKOマウスでは有意に軽減することが分かった。更に、WTマウスではIMQ塗布によって末梢血中の白血球数が増加していたが、KOマウスではそれが有意に減少していた。しかしながらSLEの特徴とされる血清中の抗二重鎖DNA抗体価上昇やクレアチニン上昇などはIMQを塗布したWTマウスでも観察されず、C57BL/6背景ではSLEを誘導できないことも明らかとなった。引き続きEBI3がIMQ塗布によって誘導される脾腫をどのように制御しているかについて、EBI3を構成要素とするサイトカインの働きに着目し解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に記載の通り、Ebi3欠損(KO)マウスおよび野生型(WT)マウスを用いて、MC903塗布によるアトピー性皮膚炎モデル実験、およびイミキモド(IMQ)塗布によるSLEモデル実験を行うことができた。SLEモデル実験については、予備実験の再現性が確認された。その他末梢血中の白血球や脾臓の免疫細胞の活性化状態を調べることができ、現在も引き続き解析中である。アトピー性皮膚炎モデル実験については予備実験で見られた差が再現できなかったため、計画書記載の別の実験系による炎症誘導を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
アトピー性皮膚炎モデル実験は予備実験で用いていたMC903塗布による炎症誘導の実験系ではEbi3欠損(KO)マウスと野生型(WT)マウス間で炎症の程度に差が見られなかったため、今後は別の実験系としてハプテン塗布によるアトピー性皮膚炎様皮膚炎症誘導実験を行うことを計画している。この実験系ではT細胞による抗原認識と活性化が重要であるので、エフェクターT細胞の分化に関わると報告されているEBI3の欠損による影響が観察できることが期待される。SLEモデル実験についてはEBI3がイミキモド塗布によって脾腫が誘導される機構にどのように関与しているかについて、特にEBI3を構成要素とするサイトカインの働きに着目して引き続き解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アトピー性皮膚炎モデル実験において予想とは異なる実験結果が出たため、当初予定していた実験の一部を行う必要がなくなり、2023年度分の経費を一部2024年度へと繰り越した。新たな実験系による実験を開始する予定もあり、繰り越し分は2024年度交付額と合わせて主に消耗品(抗体等の実験用試薬)に使用する。
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