研究課題/領域番号 |
23K07935
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
柿崎 正敏 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (00778954)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 呼吸器感染症 / ウイルス-ウイルス間相互作用 / ヒトボカウイルス / 気相液相界面培養 |
研究実績の概要 |
本研究では、ALI培養法によるin vitro気道上皮培養モデルを用いて、呼吸器感染症におけるウイルス-ウイルス間相互作用の効果・メカニズムを解析することを目的とする。本研究では、特にヒトボカウイルスとの共感染を扱う。その理由は、ヒトボカウイルスが検出される呼吸器感染症の症例では、ヒトボカウイルス以外のウイルスが同時に検出されることが多く、ヒトボカウイルスが多くのウイルスと相互作用している可能性が高いためである。 今年度は、ヒトボカウイルス1(HBoV1)との共感染に、RSウイルス、ヒトライノウイルスを用いた。その理由は、HBoV1と同時に検出される割合が高いためである。まずは、単独感染時と共感染時において、継時的にApical側のウイルス量をリアルタイムPCRで測定した。その結果、ライノウイルスとの共感染では、単独感染時と比較して増殖に差は見られなかった。一方、RSウイルスとの共感染では、単独感染時と比較して増殖が促進させた。さらに、多重蛍光免疫染色の結果、HBoV1が感染している細胞には他のウイルスがほとんど感染していなかった。また、単独感染時の免疫反応の解析の結果、HBoV1感染後にIFNλ1の発現が上昇したが、ISGsの発現は誘導されなかった。一方、ライノウイルス、RSウイルス感染後には、IFNλ1、2、3の発現が上昇し、それに連動しIFIT-1やISG15などのISGsの発現が誘導された。HBoV1感染後にIFNλ1の発現が誘導されるにも関わらずISGsの発現が誘導されないことから、HBoV1はIFNλ1シグナルを抑制することが示唆された。このことは、HBoV1が他のウイルスと同時に検出される原因の一つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、HBoV1共感染が「ウイルス増殖に与える影響」と共感染時に「各ウイルスが同じ細胞に感染するのか」を解析するとともに、単独感染時の宿主免疫応答の解析を行う予定であったが、予定通りに解析を行い結果を得ることができた。それにより、HBoV1の共感染がRSウイルスの増殖を促進することが示された。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、共感染のウイルスゲノムに対する影響として、単独感染時と共感染時において、継時的にApical側からウイルスを回収し、次世代シークエンス解析を行うことでウイルスゲノムに生じた変異を解析する。また、細胞に対する影響として、、単独感染時と共感染時において、継時的に細胞からRNAを抽出し、トランスクリプトーム解析を行うことでウイルス-ウイルス間相互作用が細胞に与える影響を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に次世代シークエンスの外注を行う予定であったが、サンプル調整が間に合わず外注できなかったため、次年度に次世代シークエンスの外注を行う。
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