研究課題
肺Mycobacterium avium complex(MAC)症は近年、患者数が増加しているが、病態において依然不明な点が多い、難治性の慢性呼吸器感染症である。そのため、肺MAC症の有効な治療法の開発は急務であり、治療法開発のための病態解明は重要である。我々は、MACの細胞壁脂質に着目し、肺MAC症の病態解明を進めている。Mycobacterium avium(M. avium)から抽出したtrehalose 6,6'-dimycolate(TDM)でヒト末梢血単核球由来マクロファージ(ヒトマクロファージ)を刺激すると、ヒトマクロファージの炎症性サイトカインの遺伝子発現、分泌が有意に亢進することを確認した。そのことから、TDMは肺MAC症の病原因子の一つと考えられた。そこで、TDMに関して更に解析を進めた。AIDS患者由来のM. avium subsp. hominissuis 104(MAH104)を32℃、37℃、42℃で培養し、菌体をアセトン、メタノール、クロロホルムで段階的に処理することで、純度の高いTDMを抽出した。質量分析計で、抽出したTDMの分子構造を解析したところ、培養温度上昇に伴い、マススペクトルのピークが質量電荷比の高い方に移動し、TDMの脂肪酸の炭素鎖が延長したことが示唆された。肺MAC症患者由来のM. avium subsp. hominissuis TH135を32℃、37℃、42℃で培養し、菌体からTDMを抽出、質量分析計で分子構造を解析したところ、MAH104と同様の結果が得られた。培養温度上昇に伴い、MAC細胞壁脂質であるTDMの分子構造が変化することで、MACの病原性が変化する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
研究環境等の問題はなく、研究実施計画に沿って研究を進めている。
今後も研究実施計画に沿って研究を進めていく予定である。菌の培養温度上昇に伴い、MAC細胞壁脂質であるTDMの分子構造が変化し、MACの病原性が変化するかを感染実験により確認する。また、菌細胞壁脂質であるglycopeptidolipidの肺MAC症の病態における役割も検討する。
実験の効率化により、消耗品購入費を低く抑えることが出来たため。研究実施計画に則り研究を進め、主に感染実験や脂質解析等のための消耗品購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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