研究課題
われわれはレプチン受容体欠損のdb/dbマウスを用いてグルコキナーゼの抑制による膵β細胞機能・量保持効果を示したが、より普遍的なものであることを明らかにするために、高脂肪高スクロース食負荷による食餌誘導性肥満2型糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。方法としては、グルコキナーゼヘテロ欠損マウス(Gck+/-)雄4週齢および対照として野生型マウス(Gck+/+)雄4週齢をそれぞれ普通食飼育群(NC群)と、高脂肪高スクロース食投与群(HFHS群)に群別し、それぞれ16、40、60週齢まで飼育した。体重・随時血糖、経口ブドウ糖負荷試験による耐糖能およびグルコース応答性インスリン分泌能(GSIS)、膵β細胞量について経時的に比較検討した。結果として、16週齢では、両マウスともNC群に比しHFHS群で体重増加を認めるものの、耐糖能に差はなかった。40週齢では、Gck+/+HFHS群はGck+/+NC群に比し、膵β細胞量の増大とGSISの明らかな増加を認め、耐糖能が保たれた。一方、Gck+/-HFHS群はGck+/-NC群に比し、膵β細胞量の増大を認めず、GSISの増加も部分的であり、耐糖能は悪化した。さらに60週齢までのより長期の負荷においては、Gck+/+HFHS群はさらなる膵β細胞量の増大とGSISの増加を認め、耐糖能に変化はなかった。それに対し、Gck+/-HFHS群では、膵β細胞量とGSISは部分的に増加し、40週齢以降は耐糖能が保持された。以上より、高脂肪高スクロース食負荷グルコキナーゼヘテロ欠損マウスは、膵β細胞量増大やGSISの増加が部分的となることから耐糖能の悪化を来した。しかし、2型糖尿病病態における非代償期とは異なり、その後の膵β細胞量やGSISの低下、進行性の耐糖能の悪化は認めなかったことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
グルコキナーゼの抑制が膵β細胞機能・量に及ぼす影響に関しては、すでに国内外で学会発表を行っており、現在、論文化をすすめている。
グルコキナーゼの抑制が膵β細胞機能・量に及ぼす影響に関しては、論文化を行う。もう一つの課題であるグルコキナーゼ活性抑制化合物の治療応用への基盤整備について、精力的に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Endocrine Journal
巻: 71 ページ: 193~197
10.1507/endocrj.EJ23-0403