研究課題/領域番号 |
23K07963
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小宮 力 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (60825256)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / シングルセル解析 / 糖尿病 / 膵β細胞 |
研究実績の概要 |
脂肪細胞特異的に急性にインスリン受容体を欠損させた(iFIRKO)マウスでは、脂肪組織が萎縮し、続いて間葉系前駆細胞群の増加を伴って脂肪組織が再生されることが報告されている。研究代表者は、このとき肝細胞の増殖を促進するmiRNAが血中エクソソームで増加することを見出し、肝臓の再生に関与するmiRNAがエクソソームに内包されて脂肪組織から分泌される可能性を報告した。 今回、iFIRKOマウスと対照マウスの皮下脂肪からそれぞれ核抽出を行いシングルセル(ヌクレウス)RNAシークエンスを行ったところ、皮下脂肪は28種類の細胞集団から構成され、間葉系前駆細胞群は、iFIRKOマウスと対照マウスで、それぞれ4種類と3種類の細胞集団で構成されていた。このうち2種類はiFIRKOマウスと対照マウスで共通の細胞集団としてクラスタリングされたが、2種類の細胞集団がiFIRKOマウスにのみ存在し、1種類の細胞集団が対照マウスにのみ存在していた。すなわち、脂肪組織が再生されるとき、間葉系前駆細胞群に定常状態とは異なってクラスタリングされる細胞集団が出現することを見出した。この細胞集団が再生作用を担うエクソソームを分泌する間葉系前駆細胞群である可能性が考えられ、遺伝子発現を検討し、FACSを用いて皮下脂肪からソーティングし培養することに成功した。現在、膵β細胞の再生作用を有するかを検討するため、マウスから単離した膵島との共培養を行い、膵島に及ぼす影響を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シングルセル(ヌクレウス)RNAシークエンスの実施および解析については問題なく進捗したが、その結果から注目するに至った細胞集団は細胞数が少なく、FACSでソーティングし培養実験に用いるためには想定以上の遺伝子改変マウスが必要であることが判明したため進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
シングルセル(ヌクレウス)RNAシークエンスの結果から着目した間葉系前駆細胞群の亜集団と、野生型マウスや糖尿病モデルマウスから単離した膵島とで共培養を行い、膵島の遺伝子発現やグルコース応答性インスリン分泌を検討する。間葉系前駆細胞群の亜集団とその培養上清に含まれるエクソソームからRNAを回収してマイクロRNA(miRNA)シークエンスを行い、miRNAの標的遺伝子のデータベース情報も参考にしながら、間葉系前駆細胞群からエクソソームに内包されて分泌され、膵β細胞の増殖やインスリン分泌能を促進するmiRNAを探索する。候補miRNAについて、合成したmiRNA mimicを培養膵島細胞にトランスフェクションして遺伝子発現などを検討し、最終的に有望と考えられるmiRNA mimicを糖尿病モデルマウスにin vivoトランスフェクションし、膵島の組織像や、糖負荷試験でのインスリン分泌能などを評価して糖尿病に対する治療効果を検討する。
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