研究実績の概要 |
塩誘導キナーゼ(SIK1,2,3)はAMPKファミリーに属し、SIK1,2,3 の各欠損/変異マウスはステロイドホルモン合成酵素の発現異常、生殖異常、代謝異常、軟骨形成異常、睡眠異常、虚血性疾患などの、個々のSIK種により異なる多彩な異常を呈する。これら多彩な表現型異常に関与する SIK1,2,3 の機能発現機構を明らかにする目的で、SIK1,2,3 に結合するタンパク質について、愛媛大学プロテオサイエンスセンターが構築した約8,300種のヒトタンパク質アレイから AlphaScreen 法を用いて、SIK1,2,3 各種の全長タンパク質との結合実験を行ない、SIK1,2,3 各種に強く結合するヒトタンパク質を、各々約20種同定した。これらの AlphaScreen 結合実験は in vitro で合成されたタンパク質同士の結合スクリーニングであるが、本研究では、より生体(in vivo)に近い培養細胞中での、SIK1,2,3 の相互作用タンパク質を同定するために、近接依存性ビオチン化法(BioID法)のビオチン化酵素として最近開発されたAirIDを用いて、培養細胞条件下における塩誘導キナーゼの結合/相互作用タンパク質の同定を行っている。今年度は生殖機能に関係する SIK2,3 の結合タンパク質を同定するために、AirID にヒトSIK2、SIK3 を各々連結させた発現プラスミドを、ヒトHEK293A細胞に導入し、LC-MS/MS法でビオチン化されるタンパク質を網羅的に同定したところ、対照実験のAirID 単独導入に比べて、AirID-SIK融合タンパク質導入時において強くビオチン化されるタンパク質として、AirID-SIK/AirID のビオチン化量比で50以上のものが、SIK2では16個、SIK3では11個のタンパク質が、結合/相互作用タンパク質の候補として同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト塩誘導キナーゼ(SIK2,3)の各全長タンパク質と、ヒトタンパク質(転写因子群やプロテインキナーゼ群等をほぼ網羅的に含む)との in vitro での結合スクリーニング実験を行った後、生体(in vivo)により近い培養細胞条件下において相互作用するタンパク質を網羅的に同定するために、SIK2,3 の各全長タンパク質に近接依存性ビオチン化酵素(AirID)を連結した発現プラスミドを作成し、培養細胞中での塩誘導キナーゼの結合/相互作用タンパク質の網羅的同定をLC-MS/MS法で行っているから。
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今後の研究の推進方策 |
塩誘導キナーゼ(SIKs)の機能発現機構を明らかにする目的で、生体(in vivo)により近い培養細胞内での SIKs の相互作用タンパク質を同定するために、SIK2,3 の各全長タンパク質に近接依存性ビオチン化酵素(AirID)を連結した発現プラスミドを培養細胞に導入し、新たにビオチン化されるタンパク質を質量分析法を用いて網羅的に同定をおこなったが、今後、SIK1を含めたSIK1,2,3各種の結合/相互作用タンパク質の相違をより高精度に同定していくと共に、同定されたタンパク質に関して、卵巣などの主にステロイドホルモン産生細胞/組織での発現/機能解析等を行っていきたい。又、SIKsに特異的な阻害剤を用いて、SIK1,2,3 各種に結合するタンパク質の変動と機能への影響を明らかにしていきたい。
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