研究実績の概要 |
本研究開始に当たり、2つの問題が生じた。1つ目は、いままでの実験に使用していたアデノウイルスの力価が上がらなかったため、使用するウイルス発現ベクターをほとんどのウイルス由来の遺伝子配列を除去し、既存のアデノウイルスベクターと比較して飛躍的に安全性とin vivoでの発現期間を改善させたガットレスアデノウイルス発現ベクターへと変更した。2つ目は、2024年3月末においていままでの実験で使用していたAndervont(An)系統 BALB/cAnNCrlCrlj がブリーダーの統合により供給が困難となり、異なる亜系統であるScott(Sc)系統 BALB/cJ へと変更せざるを得ない状況となった。そのため、既存のTSH受容体細胞外ドメイン(A-subunit)配列を組み込んだ高タイターの新作のアデノウイルスを用いてBALB/cJ における予備実験を行った。 結果は、バセドウ病の誘導は以前の約50%に比較して80%とより効率的になった。血中T4値およびT3値は、誘導型バセドウ病群でコントロール群に比して高値であり、形態学的に濾胞腔の拡大を伴う甲状腺腫大が確認された。さらに誘導型バセドウ病群への4週間の無機ヨウ素投与により血中T4値およびT3値は、コントロール群と同等に低下していることが確認され、我々の既報(Uchida,Thyroid.2023)の再現が確認できた。これによりコントロール群とバセドウ病誘発群の各群に対して無機ヨウ素投与有無によるマウス甲状腺の機能および形態学的変化、遺伝子発現変化、そして遺伝子変化に基づくオープンクロマチン解析を行う。
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