研究課題/領域番号 |
23K07976
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
西森 茂樹 帝京大学, 医療技術学部, 教授 (30838488)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 副甲状腺ホルモン / 副甲状腺ホルモン関連タンパク / 細胞内情報伝達系 / ノックアウトマウス / 過剰発現マウス / 骨粗鬆症 / 軟骨分化 / 創薬スクリーニング |
研究実績の概要 |
研究代表者は各種のノックアウトマウスと過剰発現マウスを掛け合わせる実験によって、軟骨細胞及び骨細胞において、副甲状腺ホルモン(PTH)受容体の下流で働く新たな細胞内情報伝達系を発見しました (Nishimori, JCI. 2019、Nishimori, JCI. Insight. 2019, Nishimori, Bone. 2021にて発表)。この情報伝達系では、促進因子として塩誘導性キナーゼ(SIK)と筋細胞エンハンサー因子(MEF2)、抑制因子として ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)が同じ反応経路の中で働いています。 本研究を進めることにより、骨粗鬆症(国内の推定患者数1300万人)、変形性関節症(同1000万人)、骨軟骨異形成症など骨・軟骨疾患の病態解明及び治療薬の開発につなげることができます。現在、骨粗鬆症の治療薬には骨の形成を刺激する薬剤と破骨細胞の活性を抑制する薬剤の2種類が実用化されていますが、骨の形成を刺激する薬剤は現在、副甲状腺ホルモンの一部を人工的に合成した蛋白製剤(注射薬)しかありません。研究代表者は副甲状腺ホルモン受容体の下流の情報伝達系で、塩誘導性キナーゼ(SIK)の遺伝子をノックアウトすると、副甲状腺ホルモンを投与したのと同様に、骨量が増加することを動物実験で証明しました。SIKの働きを抑制する物質(SIK阻害薬)を発見できれば、副甲状腺ホルモンの注射薬と同等の働きを持つ経口薬として、患者の利便性が大いに高まります。我々の研究の臨床応用として、SIK阻害薬の探索を研究の目的としています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、前任地のアメリカの研究所で作成・飼育していた各種ノックアウトマウス及び過剰発現マウスの輸送が困難な状況が続き、現在、マウスの維持、継代はアメリカで行なっています。 3種類の遺伝子を組み合わせ、トリプルノックアウトマウスの作成し、新生児または胎児の膝軟骨の解析を行なっていますが、個々のノックアウトマウスが生殖可能年齢まで生存できないため、トリプルヘテロマウス同士を掛け合わせています。交配の結果、トリプルノックアウトマウスが生まれる可能性は極めて低く、交配を繰り返しているため、遅延します。Cre-LoxPシステムを用いて、軟骨特異的なトリプルノックアウトマウスも作成しています。Creマウスの交配が重なると、さらに確率が低くなり、遅延しています。 発見以来の歴史が新しいSIKには市販品の良い抗体がなく、リン酸化抗体に関しては最近、ようやくSIK3のリン酸化抗体の市販が始まったばかりで、効率が良いスクリーニング系の構築に時間を要しています。
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今後の研究の推進方策 |
SIK(塩誘導性キナーゼ)の阻害作用を持つ小分子物質の探索・同定を進めるために、SIKタンパクを認識する抗体、リン酸化されたSIKタンパクを特異的に認識するリン酸化抗体が重要です。SIKファミリータンパク(SIK1、SIK2、SIK3)の中で、ノックアウトマウスが骨・軟骨系組織に明らかな表現型を持つSIK3に着目して、解析を進めています。 発見以来の歴史が新しいSIKには市販品の良い抗体がなく、リン酸化抗体に関しては最近、ようやくSIK3のリン酸化抗体の市販が始まりました。SIK3抗体及びリン酸化SIK3抗体の中で良質な抗体を見つけ出し、スクリーニングの効率を高めることを目標に、検証を進めています。 マウス新生児の肋軟骨から採取した初代培養軟骨細胞をPTHrPで処理し、PTHrPによるSIK3タンパクのリン酸化をアッセイする系を構築しました。SIKの活性を抑制する物質のスクリーニングを推進して行きます。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)他からの研究助成金を支出したため。 (使用計画)実験備品、試薬、消耗品、動物飼育費など。
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