研究課題/領域番号 |
23K07979
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松末 公彦 福岡大学, 薬学部, 教授 (10389364)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脂肪肝 / PPAR |
研究実績の概要 |
我々は、脂肪肝の発症に直接関与する転写因子PPARgの標的遺伝子として、PPARgノックアウトマウスの脂肪肝からTransmembrane and Coiled-Coil Domain遺伝子(TMCC)を単離した。本研究の目的は、TMCCがPPARgの新規標的遺伝子であることを証明し、TMCCが細胞内脂肪蓄積にどのように関与しているかを解明することである。本年度は、TMCC遺伝子の脂肪肝特異的な発現メカニズムの解明のため、5’上流域の解析を行った。 今回の検討により以下のことが明らかになった。 1) データベースを用いたゲノム解析により、TMCCにはエキソン1の異なる3つのフォーム(TMCC-1A、1B、1C)の存在が明らかになった。1Bと1Cはエキソン2に同じ翻訳開始点を持っており、エキソン1の転写開始点のみが異なっていた。1Aはエキソン1に翻訳開始点を持っていた。TMCC抗体を用いたウェスタンブロット法により各フォームの蛋白発現を確認したところ、推定されるバンドサイズ(1A: 54kDa, 1B及び1C: 50kDa)が認められ、ゲノム解析の結果を裏付けた。 2) マウスTMCC遺伝子の5'上流領域に対するデリーションルシフェラーゼプラスミドを作製した。これらのレポータープラスミドを用いた実験の結果、TMCC-1B遺伝子は、プロモーター領域、-225から -213 bpの間に、さらにTMCC-1C遺伝子は、5’上流領域、-1313から -1301 bpの間にPPAR-responsive element (PPRE)様の配列を見出した。 現在、同定したPPREにPPARgが直接結合することを証明するため、electrophoretic mobility shift assayを実施しているが、少なくともTMCC-1B及び1C遺伝子は、PPARgの新規標的遺伝子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、本年度にTMCCがPPARgの直接的な標的遺伝子であることを証明する計画であった。その計画の中で、in vivoでPPARgがPPREに結合していることを証明するため、 chromatin immunoprecipitation assay を試みたが、納得のいく結果が得られていない。その理由として、使用したPPARgの抗体が良くないと推測された。今後この点を含め、さらなる詳細な条件検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
TMCCがPPARgの直接的な標的遺伝子であることを証明する。そのために、electrophoretic mobility shift 及び chromatin immunoprecipitation assay(Chip assay) を実施する。特にChip assayについては、もう一度ゲノムの調製法や抗体の種類などを含めた詳細な条件検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用した試薬等、予想していた値段よりも低価であったものがあったため次年度使用が生じた。令和6年度は、前年度うまくいかなかったChip assayの再検討をおこなうため、その費用に充当したいと考えている。
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