研究課題/領域番号 |
23K07985
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笹子 敬洋 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (20550429)
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研究分担者 |
添田 光太郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20748347)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖尿病 / サルコペニア / インスリン / 老化 |
研究実績の概要 |
サルコペニアと他の加齢関連疾患の関連を考える上で、骨格筋と他組織との間における、血液中の低分子代謝産物の往来を介したネットワークの存在が想定される。その候補分子を絞り込むため、我々が樹立したサルコペニアモデルマウスの速筋と血漿を用いた、メタボローム解析を行なった。 モデルマウスの両者において同じ方向の変化を示すものに注目したところ、共通で低下した代謝産物としてホモカルノシンとアンセリンが抽出された。両者はイミダゾールジペプチドと呼ばれ、抗酸化作用や抗疲労作用が知られるほか、認知症予防に対して抑制的に働くことも報告されている。 また、標的分子のクラスタリング解析からは、アシルカルニチンの上昇が速筋と血漿の両者で認められ、ミトコンドリアにおける脂肪酸酸化が促進されていることが考えられた。一方で、脂肪酸酸化の代謝産物は最終的にTCAサイクルでATP合成に使われるが、その後半の代謝物は、速筋で増加したのに対して、血漿では減少する傾向が認められた。このような変化は、我々の先行研究で示したミトコンドリアの質的・量的異常に由来する現象である可能性が考えられた。 このようなサルコペニアモデルマウスと、他の加齢関連疾患のモデルマウスとの交配は、引き続き継続中である。次年度以降に、上記の代謝産物の変化を念頭に置きつつ、表現型を解析する予定であり、サルコペニアが他疾患に及ぼす影響が明らかにできるものと期待している。 加えて我々が想定する、骨格筋のインスリン/IGF-1シグナルを中心とした、ホメオスタシスの維持と老化の抑制に寄与する組織間ネットワークの概念について、J Diabetes Investig誌にEditorialを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋と他組織間のネットワークを介在することが期待される候補分子の絞り込みを行なった。また骨格筋を中心とした組織間ネットワークの存在とその役割について、論文化を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
我々が樹立したサルコペニアモデルと他の加齢関連疾患のモデルマウスとの交配は、一部の疾患モデルマウスで妊孕能が必ずしも十分でない、或いは、複数の標的遺伝子が同一染色体に載っている、といった理由により、交配に時間を要するものが多いが、引き続き意図したモデルの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度中の樹立を目指していた、サルコペニアモデルと他の加齢関連疾患のモデルマウスとの交配は、一部の疾患モデルマウスで妊孕能などの理由により、予想以上に交配に時間を要したため、表現型の解析まで持ち込むことができず、予定額の執行に至らなかった。来年度にはこの系統を樹立できる見通しであり、その表現型の解析も来年度に行ない、それにかかる費用を支払いたく考えている。
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