研究課題/領域番号 |
23K08007
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
菅原 健二 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (70645217)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 逆行性グルコース輸送 / メトホルミン |
研究実績の概要 |
代表者らは画像診断装置PET/MRIや新規撮像法MR Enterography (MRE)およびそれらの数理解析により、「消化管における逆行性グルコース輸送機構」の発見に至った。本研究では、消化管における逆行性グルコース輸送機構に関与する分子の同定やその輸送動態の解析、さらに同機構が腸内細菌叢やその代謝物に与える影響の解析を介して、同機構の本態を明らかにすることを目的とする。
2023年度は、逆行性グルコース輸送機構のメカニズム解明の第一段階として、マウス実験系で特にFDGの集積が強かった大腸組織における排泄に関与するグルコース輸送体の同定を試みた。正常マウスに600 mg/kgのメトホルミンを経口投与し、6時間後の大腸組織を用いて、RNAシークエンス解析を行った。その結果、階層的クラスタリング解析では、メトホルミン投与により大腸での遺伝子発現量には大きな差が生じることが明らかになった。 次に、RNAシークエンス解析データから、グルコース輸送体を抽出し、各々の遺伝子のTPM(transcripts per million)を比較検討した。Glut1はメトホルミン投与により有意にTPMが増加した(コントロール群125.3±10.2、メトホルミン群224.9±28.1、p <0.05)一方で、Sglt1ではメトホルミンに有意にTPMの低下(コントロール群112.8±18.3、メトホルミン群72.7±15.3、p <0.05)が認められ、Glut4は有意差を認めなかったものの低下傾向(コントロール群25.0±2.3、メトホルミン群15.3±5.6、p=0.08)を認めた。 以上の結果により、メトホルミンによる腸管腔内へのグルコース排泄機構においてはGLUT1の発現量の増加およびSGLT1の発現量の低下が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は当初の計画通り遂行可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、消化管における逆行性グルコース輸送機構を対象とし、(1) 逆行性グルコース輸送機構の動態解析および糖輸送体の同定、および(2) 逆行性グルコース輸送機構の生理的意義の解明、の2つのアプローチにより、同機構の本態を明らかにすることを目的とする。 2024年度は、逆行性グルコース輸送機構の生理的意義の解明のため、逆行性グルコース輸送機構が腸内細菌や代謝物に与える影響を解析する。 正常マウスにメトホルミンを長期間投与し、糞便を対象とした網羅的な腸内細菌叢の組成分析により、逆行性グルコース輸送機構の亢進による腸内細菌叢の多様性や属レベルでの構成の変化を解析する。また、腸内細菌の組成や機能変化は、短鎖脂肪酸に代表される腸内最近由来の代謝物変化を介して生体の耐糖能に影響を与えると考えられているため、次に同様のマウス実験において、GC/MSを用いて糞便や血清サンプルの網羅的な代謝物解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞実験に係る消耗品の購入が一部令和6年度になったために、次年度使用額が生じた。 進捗状況は概ね研究計画通り進行しているため、令和6年度は研究計画および研究経費に沿って、次年度使用額および令和5年度の助成金を使用する予定である。
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