研究課題/領域番号 |
23K08013
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
木村 俊秀 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (60404373)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / エンドサイトーシス / Gタンパク質 / Rab27a |
研究実績の概要 |
本研究では、GDP型Rab27aとその新たな結合候補タンパク質である分子シャペロンの結合特性や役割を解析することで、インスリン分泌後のエンドサイトーシスを制御するメカニズムを分子レベルで解明することを目的とする。エンドサイトーシスは、長期にわたる適切なインスリン分泌に必須であり、その破綻は2型糖尿病の新たな原因となりうる。一方、これまでの研究ではインスリンを放出するまでを扱い、その後のエンドサイトーシスを扱った研究は皆無である。本研究は、申請者が同定したGDP型Rab27aシグナルを解析することで、分泌後のエンドサイトーシスシグナルの解明を行う。本研究成果は、エンドサイトーシスをターゲットとした新しい糖尿病治療薬を開発する基盤となる。 本年度は、GDP型Rab27aと分子シャペロンの結合を生化学的に解析した。まず、分子シャペロンの各種プラスミドとリコンビナントタンパク質を作製した。次に、免疫沈降実験とin vitro binding assayより、GDP型Rab27aと分子シャペロンが膵B細胞内で特異的に直接結合することを明らかにした。次に、分子シャペロンのドメイン構造をもとに各種フラグメントを作製し、GDP型Rab27aと結合する部位を同定した。 以上の結果より、GDP型Rab27aと分子シャペロンの結合様式が明らかになった。本研究成果は、次年度以降に行う分子シャペロンの活性制御機構を理解する上で極めて重要であると共に、GDP型Gタンパク質によるシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、GDP型Rab27aとその結合候補タンパク質である分子シャペロンが、インスリン分泌後のエンドサイトーシスを制御する分子メカニズムを、以下に従って解明する。 令和5年度:GDP型Rab27aと分子シャペロンの結合を評価する。 令和6年度:GDP型Rab27aが分子シャペロンの活性に及ぼす影響を調べる。 令和7年度:GDP型Rab27aと分子シャペロンの結合がエンドサイトーシスで果たす役割を検討する。 本年度は、生化学的な手法を用いることで、GDP型Rab27aと分子シャペロンが膵B細胞内で特異的に直接結合することを明らかにした。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
分子シャペロンの標的タンパク質として、クラスリンが報告されている(Cell 45, 3-13, 1986)。クラスリンは、重合と脱重合をシーケンシャルに行うことで、細胞膜直下でエンドサイトーシス小胞の形成を制御している。そこで、GDP型Rab27aの結合が、分子シャペロンのクラスリン重合/脱重合活性に及ぼす影響を調べるために以下の実験を行う。 1)Rab27aや分子シャペロンの変異体を発現したMIN6細胞からエンドサイトーシスされた小胞を回収し、クラスリンの重合状態を解析する。 2)ショ糖密度勾配遠心法を用いて精製したエンドサイトーシス小胞にRab27aや分子シャペロンの変異体を添加し、クラスリンの動態を解析する。 3)分子シャペロンをノックダウンした細胞に、RNAiの影響を受けないようにRNA配列を修飾した分子シャペロン各変異体を発現させ、蛍光標識クラスリンの動態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析する。
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