研究実績の概要 |
① 糖尿病群でのクロマチン構造の変化 正常血糖群と糖尿病群との間で、膵島open-chromatin領域内cis-elementの違いを比較したところ、膵β細胞機能や分化において重要であることが報告されているMafA, Pdx1, Nkx6.1, NeuroD1, Isl1などのコンセンサス配列数が糖尿病マウスにおいて低下していることが確認された。つまり、糖尿病状態はクロマチン構造を変化させ、上記転写因子のDNAへのアクセスを抑制している可能性が考えられた。同時に、糖尿病状態でコンセンサス配列数が低下している転写因子は、RNA-seqの結果から糖尿病において発現量が低下していることも確認しており、これによるクロマチン構造の変化が生じている可能性も考えられた。
② 糖毒性軽減によるクロマチン構造の変化 糖尿病群と糖毒性軽減群の2群間において、ATAC-seq解析上差のあったピーク内の転写因子結合配列を比較すると、Mafa, NeuroD1, Foxa2, Isl1等の転写因子結合モチーフが多数抽出された。つまり、これら膵β細胞機能に重要な転写因子がDNAにアクセスしやすくなっていることが判明した。また、これら転写因子結合モチーフは糖尿病状態のオープンクロマチン内における低下においても抽出されてはいたが、他転写因子、例えばPdx1やNkx6.1などと比べ、より糖毒性に鋭敏に反応し得ることも明らかとなった。これら結果から、糖尿病状態、特に高血糖毒性に鋭敏に反応する転写因子結合モチーフの網羅的抽出に成功したと考える。
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