研究課題/領域番号 |
23K08065
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 清司 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80595562)
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研究分担者 |
鈴木 貴 東北大学, 医学系研究科, 教授 (10261629)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乳癌 / 膜型アンドロゲン受容体 |
研究実績の概要 |
膜型アンドロゲン受容体(mAR)のひとつであるZIP9の乳癌組織における発現を免疫組織化学法により検討し、その発現意義を統計学的に解析した。ZIP9の染色性は乳癌細胞の細胞質に認められ、正常乳腺上皮よりも発現が亢進していた。ZIP9の発現を陰性と陽性の2群に分けて解析したところ、ZIP9陽性症例はエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体と有意に逆相関していた。また、予後解析の結果、ZIP9陽性症例は有意に再発しやすく予後不良であった。この結果は多変量解析においても同様で、ZIP9は乳癌の独立予後不良因子であった。このことからZIP9は乳癌の治療耐性に関わる悪性化因子と考えられた。 また、悪性度が高いトリプルネガティブ乳癌(TNBC)のみを対象とした解析も施行した。その結果、TNBCにおいてはZIP9はリンパ節転移と正相関する一方で細胞増殖能(Ki67)とは逆相関し、増殖・浸潤において複雑な作用を有する可能性が考えられた。また、TNBCでは核内AR(nAR)とZIP9の間に有意な相関が見られ、両受容体の間の相互作用の可能性が示唆された。これらは非TNBC乳癌では認めれられなかった知見であり、乳癌のサブタイプによって異なる作用をZIP9が有することを示唆すると考えられた。 培養細胞を用いて上記結果を検証すべく、乳癌培養細胞MCF-7にZIP9アゴニストを添加したが、細胞増殖に対する有意な作用は示さなかった。また、ZIP9がnARの活性を調節するかどうかレポーターアッセイを用いて検討したところ、やはり有意な変化は得られなかった。これはMCF-7におけるZIP9の発現が極めて低いことに起因すると思われ、ZIP9発現プラスミドの構築を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた治療耐性モデルの樹立について、内分泌療法耐性株の樹立が難航しているものの化学療法耐性株の樹立には成功し、化学療法耐性化に伴うmARの発現変化を検証する準備が整った。 乳癌培養細胞におけるZIP9の発現が低く発現プラスミドの構築を余儀なくされたが、プラスミドの構築は順調に進んでいる。また、乳癌細胞のmARの刺激には当初BSA結合テストステロンを想定していたが、ZIP9に関しては特異的アゴニストを入手することができ、ZIP9特異的なシグナル伝達経路を探索することができると考えられた。 最終年度に予定していた乳癌組織におけるmARの免疫組織化学的発現解析を一部先行して行い、乳癌の進展におけるZIP9の関与を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在保有している乳癌培養細胞におけるmARの発現をmRNA、タンパクレベルで解析し、発現が低いものについては発現プラスミドの作製を急ぐ。化学療法耐性株の樹立には成功したので、化学療法耐性化におけるmARの役割に関する機能解析を進める。ZIP9についてはTNBCにおいてnARとの相互作用の可能性を見出すことができたので、nAR陽性TNBC細胞であるMDA-MB-453を用いて両者の相互作用を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
内分泌療法耐性モデルの作製が難航し、当該モデルを用いて行う予定であった機能解析に遅れが生じた。その分、最終年度に予定していた免疫組織化学的解析を先行して行ったが、試薬単価の関係で余剰が発生した。実験を加速させるため発現プラスミドの構築を一部外注することを計画しており、余剰額はそちらに充てる。
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