研究課題
我々は45検体の腹膜偽粘液腫(Pseudomyxoma peritonei:PMP)に対し、全エクソームシーケンス解析を行い、その中で腫瘍含有率が35%以上ある15検体のPMPと8検体の非癌性大腸組織について、ゲノムワイドDNAメチル化解析と発現解析を行った。その結果、15個のPMPはDNAメチル化において少なくとも2つのエピジェノタイプ、ユニークメチル化エピジェノタイプ(UME)と正常様メチル化エピジェノタイプ(NLME)に分類されることがわかった。さらに大腸がんをDNAメチル化レベルにより4群に層別化可能なプローブを用いて、The Cancer Genome Atlas (TCGA)データベース上の大腸がん297例と正常大腸粘膜37例をPMPと比較したところ、UME 型 PMP は LME型大腸がんに、NLME 型 PMP は NLME型大腸がんに分類された。この結果からも、PMPには少なくとも2つのサブタイプが存在することが判明した。これらの結果は論文にまとめ、報告済みである。さらに発現解析と組み合わせ、DNAメチル化が有意に上昇し、発現が有意に減少する36遺伝子を同定した。その中で、現在我々はヒトのがんと関連することが示唆され、なおかつ10検体正常とPMP組織のペアにおいて、すべてのPMP組織で発現が有意に減少するTSPYL5とHOXD1という2つの遺伝子に注目している。同遺伝子の発現が低い大腸癌細胞株HCT116を用いて遺伝子発現実験を行った結果、TSPYL5が細胞遊走に重要な役割を果たしていることが示唆され、さらにHOXD1については、分化への関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
すでにPMP検体を用い、DNAメチル化が有意に上昇し、発現が有意に減少する36遺伝子を同定しており、現在はその遺伝子群の精査を行っている。また、オルガノイドの検体数も順調に増えており、遺伝子が決定次第、機能解析を行える環境が整いつつある。
すでにPMP検体を用い、DNAメチル化が有意に上昇し、発現が有意に減少する36遺伝子を同定しており、現在はその遺伝子群の精査を行っている。上記で触れたTSPYL5とHOXD1を用い、PMPオルガノイドにおいても同様の結果が得られるか、検体数を増やしても同様の結果となるか検討する。また、すでに得られている36遺伝子の他の遺伝子についても検討していく。
旅費に12万を計上していたが、急遽宿泊を必要としなくなったため、計上していない。また、論文投稿費が円安の影響で予想以上に高く、そちらに旅費分を入れたが、少量分余剰が出た。そのため、その余剰分を次年度使用とした。
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