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2023 年度 実施状況報告書

膵癌肺転移及び腹膜播種の免疫微小環境をターゲットとした新規治療開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K08165
研究機関東北大学

研究代表者

青木 修一  東北大学, 大学病院, 助教 (30844451)

研究分担者 熊田 和貴  東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (10370149)
井上 亨悦  東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (30912711)
松居 彩  金沢大学, 医学系, 助教 (40609632)
村上 圭吾  東北大学, 医学系研究科, 講師 (60742707)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード膵癌肺転移 / 腫瘍微小環境 / マルチオミックス解析 / 腫瘍免疫
研究実績の概要

切除可能膵癌に対する術前化学療法(neoadjuvant therapy:NAT)の有用性が多施設共同前向き試験(PREP02/JSAP05試験)で証明され、NAT後の外科的切除が標準治療となった。しかし、NAT後の手術を行なっても約60%の症例で術後再発を認め、予後不良の原因となる。膵癌術後の再発部位として、肝臓、リンパ節、肺が主であり、転移部位によって治療反応の違いが報告されている。
大腸癌細胞株を用いたマウスモデルによる最近の報告では、大腸癌肝転移に対する免疫チェックポイント阻害薬(ICB)の有用性は示されなかったが、大腸癌皮下腫瘍ではICBが腫瘍増殖を有意に抑制することが報告された。2つの腫瘍では、腫瘍内免疫細胞の構成が全く異なり、ICBの効果の違いに起因している。ヒト膵癌切除サンプルにおいて、肺、腹膜および肝転移の免疫染色解析を行った他の報告では、腹膜や肝転移に比べ、肺転移ではCD8-infilitrated T細胞が増加し、PD-L1の発現が亢進している。さらに、術後肺転移の患者は、腹膜転移や肝転移の患者よりも予後が良好である。
一般に、膵癌腫瘍内は不均一な細胞成分の集合体であり、多クローン性を有する。その中で、転移部位の微小環境に適応した特異的なクローンだけが、遠隔臓器の転移巣を形成することができる。つまり、臓器特異的な微小環境が転移クローンの増殖に重要な役割を果たしており、それら再発部位の微小環境の違いを明らかにすることで、再発部位に即した治療戦略開発が行える。本研究の目的は、膵癌肺転移と肝転移、腹膜播種における腫瘍微小環境の違いを明らかにし、それぞれの転移増殖の分子メカニズムを探り、最終的に膵癌術後再発に対する分子標的治療やICBとの併用療法などの新しい治療戦略を開発することである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

原発巣切除後の肺転移巣、肝転移巣、腹膜転移巣の切除標本を用いた免疫染色を行った。CD8、Treg、HLA-class1、PD-L1の発現を比較検討すると、癌細胞膜上のHLA-Class Iの発現は、膵癌原発や肝転移腫瘍よりも肺転移腫瘍により強く発現していた。CD8+T細胞の腫瘍内浸潤は、膵癌原発よりも肺転移に強く認めた。免疫細胞におけるFoxp3やPD-L1の発現レベルは、いずれの腫瘍においても非常に弱かった。今後は、それぞれの腫瘍のDNA抽出とnCounter解析によるトランスクリプトーム解析を行う予定である。

今後の研究の推進方策

これまでの免疫染色解析で、肺転移は原発腫瘍や肝転移と比較して、腫瘍内免疫応答が賦活化していた。腫瘍免疫応答の低下を認める肝転移とは全く違う微小環境を認めた。今後は、それぞれのマルチオミックス解析を行い、微小環境を特徴づけるシグナルや発現を明らかとし、膵癌マウス肺転移モデル、肝転移モデルにおいて治療ターゲットを探る予定である。将来的には膵癌肺転移に対する免疫チェックポイントを用いた新規治療を確立することを目指す。

次年度使用額が生じた理由

切除サンプルを用いたマルチオミックス解析の外注手続きが遅延しており、次年度に提出する予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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