研究実績の概要 |
現在最もポピュラーな肝疾患は非アルコール性脂肪疾患である。脂肪肝を背景にした悪性腫瘍に対する肝切除術の機会は増加し、術後肝障害や肝不全となることが多い。脂肪肝の虚血再灌流障害後の肝修復機転とその制御機構を解明することを目的として本研究をおこなった。これまでわれわれは、活性化したナチュラルキラーT(NKT)細胞がマクロファージと相互作用することで、マクロファージの形質転換を加速して正常肝の肝虚血再灌流障害を軽減し肝修復を促進することを見いだした。そこで、雄性8週令C57BL/6マウスに高脂肪食(HFD)または通常食(ND)を12週間給餌して脂肪肝を作成した。また特異的NKT細胞刺激薬であるαガラクトセラミド(αGC)またはVehicle(Veh)を投与し、再灌流6,24,48時間後に肝組織と血液を採取し、生化学的検査、組織学的検査、遺伝子発現解析などをおこない、脂肪肝虚血再灌流障害におけるNKT細胞の役割を検討した。12週間のHFD負荷はND負荷よりも体重、肝重量、肝脂肪量、血清ALT値、血清総コレステロール値などを増加させた。さらに脂肪肝は正常肝よりもALT値、肝壊死面積、炎症性サイトカイン(TNF,IL-6)が増加し抗炎症性サイトカイン(MR,IL-10)が減少した。αGCを投与するとVeh投与よりALT値、肝壊死面積は増加し、肝細胞増殖マーカーであるPCNA陽性細胞数は減少した。また炎症性サイトカイン(TNF,IL-6)が増加し抗炎症性サイトカイン(MR,IL-10)が減少した。さらにTh1(IFN),Th2(IL-4, IL-13)サイトカインが増加した。αGC投与によって誘導された活性化NKT 細胞は脂肪肝虚血再灌流により産生される炎症性サイトカイン産生をさらに増強して肝障害を悪化させ肝修復を遅延させる可能性が示唆された。
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