研究課題/領域番号 |
23K08200
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 浩一 自治医科大学, 医学部, 教授 (70332369)
|
研究分担者 |
力山 敏樹 自治医科大学, 医学部, 教授 (80343060)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | Satellite α tanscript / セントロメア / 染色体不安定性 / 脱メチル化異常 / 発癌リスク / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
正常な染色体分配には染色体のセントロメア領域のメチル化が必須です。セントロメア領域は反復配列であるSatelliteα配列より構成され、そこから転写されるnon-cording RNA であるSatellite α transcript(SatA)が正常な染色体分配を司ります。我々はセントロメア領域のメチル化異常によりSatA が過剰発現し、特定の染色体を標的として数的異常を惹起する事を明らかにしました。さらに、脱メチル化剤の投与により染色体不安定性が誘導され、膵癌細胞株の表現型に変化を及ぼす事を示しました。染色体不安定性という生物学的特徴は、癌の発生や進展に関わり悪性度を表現し、薬剤応答では耐性を誘導すると考えられています。しかし我々の最近の検討では、SatAによる染色体不安定性の誘導が、トポイソメラーゼ I 阻害剤の感受性を高めることをマウス大腸癌細胞株で明らかにしました。本研究では、SatA が誘導するCIN を、免疫チェックポイント阻害剤を含めた抗癌剤の治療標的として捉え、その薬剤感受性に対する影響をin vitro 及びin vivo で検証します。SatA が誘導するCINの臨床的意義を異なる視点から見直す事で、薬剤効果判定や治療の新たなアプローチに展開しようとするものです。 本年度は、CRISPR-dCas9レンチウイルス遺伝子発現活性化システムを用いた内因性Satellite alphaの発現誘導を進めています。DNAダメージに関わるヒストン蛋白(γH2AX)の蓄積を指標として、染色体不安定性の誘導を評価、さらに染色体不安定性の誘導によって薬剤感受性への影響を評価します。また、ヒトMajor satellite を組み込んだMCF7、マウスMajor satellite を組み込んだCT26とMC38を用いて同様の実験を行い、先行実験の再現性を確認しています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 【内因性Satellite alphaの過剰発現による染色体不安定性の誘導】 ヒトおよびマウス細胞株(MCF7、HCT116、CT26、MC38等)を対象として、CRISPR-dCas9レンチウイルス遺伝子発現活性化システムを用いた内因性Satellite alphaの発現誘導を進めている。DNAダメージに関わるヒストン蛋白(γH2AX)の蓄積を指標として、染色体不安定性の誘導を評価する。さらに染色体不安定性の誘導によってトポイソメラーゼ阻害剤や代謝拮抗剤などの薬剤感受性への影響を評価する。
【外因性Satellite alphaの過剰発現による染色体不安定性の誘導】 ヒトMajor satellite を組み込んだMCF7(すでに作成済み)、マウスMajor satellite を組み込んだCT26(免疫チェックポイント阻害剤に耐性、すでに作成済み)とMC38(免疫チェックポイント阻害剤に感受性有り、すでに作成済み)を用いて同様の実験を行い、先行実験の再現性を確認している。
|
今後の研究の推進方策 |
【マウス】 マウスMajor satellite を組み込んだCT26とその親株CT26をC57BL/6Jマウスの皮下に移植したのち、免疫チェックポイント阻害剤を腹腔内投与し、薬剤耐性の克服が得られるか評価する。さらにマウスMajor satellite を組み込んだMC38に耐性誘導を行い、BALB/cマウスの皮下に移植したのち、免疫チェックポイント阻害剤を腹腔内投与し、薬剤耐性の克服が得られるか評価する。現在、C57BL/6Jマウスに親株CT26を、BALB/cマウスの皮下にMC38を移植し正着を観察している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
マウス実験に係わる検査試薬を次年度にまわしたため、また消耗品の価格変動のため次年度使用額が生じました。消耗品購入の繰り越しにまわします。
|