研究課題/領域番号 |
23K08205
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本間 重紀 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30533674)
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研究分担者 |
北村 秀光 東洋大学, 理工学部, 教授 (40360531)
市川 伸樹 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (50779890)
吉田 雅 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (70772333)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 放射線化学療法 / 抗腫瘍免疫 / 異時性遠隔転移 |
研究実績の概要 |
直腸がんの集学的治療では、術前の放射線治療および化学療法(NACRT)を含めた標準治療の向上が局所再発率や遠隔転移率の低減において重要である。抗腫瘍効果のメカニズムの一つとして、生体内の抗腫瘍エフェクターT細胞によるがん細胞の細胞死誘導があり、近年、免疫チェックポイント阻害薬やメトホルミンなど、宿主免疫賦活の効果があるとされる薬剤と標準治療を組み合わせる併用治療の検討がなされている。 一方、エフェクターT細胞の誘導・活性化のためには、樹状細胞などの抗原提示細胞によるがん抗原の取り込みとT細胞への提示が重要であるが、直腸がんのNACRTにおけるエフェクターT細胞誘導に際して、腫瘍微小環境を構成する樹状細胞やマクロファージによるがん抗原の取り込みやT細胞への抗原提示能に対する作用効果については未解明である。そこで我々は、まずin vitro培養実験においてマウス大腸がん細胞株CT26にメトホルミンを投与し、これに抗がん剤(5-FU)および放射線照射を併用し、MTTアッセイを実施した。メトホルミンに放射線照射・抗がん剤投与を併用することで、相加的に細胞増殖抑制効果が向上することを示した。また、先行研究においてマウス大腸癌細胞株を脾臓内注射し、肝転移を形成するマウス大腸癌肝転移モデルおよび皮下に腫瘍細胞を播種し皮下腫瘍を形成する局所腫瘍モデルを作成し、メトホルミン投与によって、腫瘍増殖および肝転移が抑制されることを示している。そこで我々は、マウス大腸癌肝転移モデルより脾臓および肝臓組織を回収し、フローサイトメトリーを実施した。その結果、メトホルミン投与によって転移巣および脾臓において、CD4陽性T細胞およびCD8T細胞が有意に増加し、また、CD8陽性T細胞においてIL-2の産生およびGranzymeBの発現が増加することをELISA法、細胞内染色を用いて示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス遠隔転移モデルにおいて、転移巣および脾臓でエフェクター細胞が増加し、サイトカイン産生および細胞傷害性分子発現について検討した。現在は、メトホルミン投与に抗がん剤投与、あるいは放射線照射を併用して、局所腫瘍、遠隔転移腫瘍、脾臓における免疫担当細胞の変化および各種サイトカイン産生・細胞傷害性分子発現の程度について比較検討する予定であり、マウス実験については概ね順調に進展している。一方、ヒト臨床検体の採取については症例の蓄積を進めている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
肝転移巣形成マウスモデルを用いて、肝臓組織および脾臓組織において、メトホルミン投与がエフェクター細胞のポピュレーションや機能変化に与える影響について検討した。今後はメトホルミンの投与に放射線照射あるいは抗がん剤投与を併用し、in vivoにおける転移形成能に与える影響および宿主免疫環境における各種エフェクター細胞の変化について、免疫染色およびフローサイトメトリー、細胞内染色によるフローサイトメトリーを用いて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付され受領した助成金は研究計画の通り使用したが、採取したヒト臨床検体の解析について、腫瘍局所および末梢血液中の免疫担当細胞や免疫担当因子の発現レベルについての解析まで研究が至らなかったため、その分の支出が減額となった。次年度使用額として繰り越した152,580円は、次年度の助成金使用計画のうち、消耗品費(プラスチック製品、等)、in vivoにおける機能解析費に追加して使用する計画である。
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