研究課題/領域番号 |
23K08218
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
塩崎 敦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40568086)
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研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / イオンチャネル |
研究実績の概要 |
まず、ヒト食道腺癌細胞株OE33から癌幹細胞を抽出・培養し、抗癌剤耐性・再分化能などのStemnessを確認した。Microarrayによる網羅的遺伝子発現解析では、CD44、EpCAM、SOX2などの癌幹細胞マーカーの上昇と共に、Ca2+透過性陽イオンチャネルtransient receptor potential vanilloid 2 (TRPV2)や、Na+/K+/2Cl-共輸送体1(NKCC1): solute carrier family 12 member 2 (SLC12A2)が、癌幹細胞において高発現していることを確認した。更に、TRPV2選択的阻害剤:トラニラストやSLC12A2選択的阻害剤:フロセミドの癌幹細胞増殖抑制効果や、抗癌剤の作用増強効果を確認した。これらの結果は、英文論文としてまとめ報告した(Ann Surg Oncol. 30:8743-8754, 2023)。同時に、ヒトBarrett食道腺癌組織におけるTRPV2やSLC12A2の発現レベルを解析したところ、ALDH1A1と正の相関を示すことが明らかとなった。OE33細胞をトラニラストやフロセミドで処理するとALDH1A1 mRNA発現は有意に減少した。更に、胃癌においてTRPV2がPD-L1の発現を制御し、PD-1への結合に影響を及ぼすことを解明した(Ann Surg Oncol. 30:8704-8716, 2023)。 一方で、肝細胞癌細胞株HepG2から癌幹細胞を抽出しcalcium voltage-gated channel auxiliary subunit gamma 4 (CACNG4)が高発現していることを見出し、その阻害剤アムロジピンの抑制効果についてまとめ報告した(Anticancer Res 43: 4855-4864, 2023)。また、大腸癌におけるNa+/K+-ATPase (Ann Surg Oncol 30: 6898-6910, 2023)の機能解析・臨床病理学的意義を報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画のうち、ヒト接合部癌・食道腺癌組織におけるTRPV2・NKCC1・癌幹細胞マーカー発現の相関解析、TRPV2・NKCC1制御による癌幹細胞特異的な増殖抑制効果、及び抗癌剤併用効果の検討などの基礎実験は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、TRPV2 siRNAを導入した細胞株の遺伝子発現変化をmicroarrayにより網羅的に解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、癌幹細胞にTRPV2・NKCC1や高発現plasmidをトランスフェクションし、導入後の遺伝子発現変化をmicroarrayを用いて網羅的に解析する。更に、各種抗癌剤・分子標的治療薬による抗腫瘍効果が、TRPV2・NKCC1阻害剤トラニラスト・フロセミドの併用により増強されるか否かを解析する。また、癌幹細胞におけるTRPV2・NKCC1イオン動態を介する細胞周期・アポトーシス制御機構解明を進めるとともに、in vivoにおけるTRPV2・NKCC1制御による皮下腫瘍成長抑制効果、及び抗癌剤併用効果について検討する予定である。
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