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2023 年度 実施状況報告書

大動脈瘤のmiRNAに着目した病態解明と発症早期バイオマーカーの探索

研究課題

研究課題/領域番号 23K08258
研究機関大分大学

研究代表者

吉村 健司  大分大学, 医学部, 病院特任助教 (10973993)

研究分担者 外山 研介  愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (60793346)
宮本 伸二  大分大学, 医学部, 教授 (70253797)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード大動脈瘤 / miRNA / バイオマーカー / バイオバンク
研究実績の概要

腹部大動脈瘤の患者の手術時に採取される大動脈瘤壁を液体窒素で凍結保存している。同時に術前に採血して、血液検体も保存している。このバイオバンクの検体の一部を用いて、miRNAの発現に着目したバイオマーカーの検索を行ってきた。事前のin silico analysisで2つのmiRNA(miR-770-5p, miR-193b-5p)に着目することとし、大動脈瘤壁組織中のmiRNAの発現量をRT-qPCRで解析した。その結果、いずれのmiRNAも瘤径が大きい患者ほど、発現量が小さくなる傾向がみられた。また、同一患者の大動脈瘤組織で瘤径が最大の部分と瘤径が小さい部分(瘤になりかけている部分)との比較も行ったところ、瘤径が大きい部分の方が、いずれのmiRNAも瘤径が最大の部分の方が、瘤径が小さい部分より発現量が小さいことが判明した。これらのmiRNAは3つのmRNA(TMEM140, APOC1, APOE)を共通して制御する。APOC1とAPOEは脂質代謝系に関わる遺伝子であり、TMEM140は膜の発現に関わる遺伝子であることから、大動脈瘤の形成に関わるものとしては膜の発現に関わるTMEM140が重要な役割を担っているのではないかと考えている。これを裏付けるために、エラスターゼを用いた動物モデルの作成を現在行っているところであり、サンプルの蓄積を行ったのち、組織、血液中のmiRNAの発現を解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

in silico analysisで大動脈瘤の瘤径が大きい大動脈瘤壁組織ではTMEM140、APOE、APOC1の発現量は有意に低下しており、この3つのmRNAを共通で制御するmiRNAが大動脈瘤の形成に影響している可能性が高いと考えられる。miR WalkのデータベースからこれらのmRNAを共通して制御していると予測されるmiRNAを検索したところ、miR-770-5p、miR-193b-5pの2つに絞られた。これらは大動脈瘤の瘤径が大きくなればなるほど、発現量が大きくなると予想していたが、qPCRの結果、実際はその逆で、大動脈瘤の瘤径が大きくなると、発現量が小さくなっていた。予想される機序として、瘤化する前段階の動脈硬化が進行するフェーズからある程度の大きさになるまでは、発現量が増え、ある一定の大きさになったところから低下してくることが1つの機序として考えらえ、もう一つの機序は瘤化が始まるところから徐々に発現量が低下してくることが考えられる。これをさらに検証するため、ヒト大動脈瘤組織のうち、術中に瘤径が最も大きな部分と瘤になりかけている瘤径の小さい部分を同一症例から採取し、その2か所のmiRNAの発現量をqPCRで調べた。その結果、やはり瘤径の大きい部位は小さい部分より発現量が小さい症例が多かった。そのためin silico analysisから予想される結果とは反対の結果となったが、一定の傾向は認められたことから、いづれかのmiRNAは大動脈瘤の拡大の進行に関わっているものと判断している。

今後の研究の推進方策

大動脈瘤組織でmiRNAの発現に一定の傾向を認めた。これをバイオマーカーとして用いるには、血液中でも同様の傾向をみる必要がある。そのため、大動脈瘤患者の血液と非大動脈瘤患者の血液中のmiRNAの発現を調べる。
また、ヒトの組織サンプルでの解析は様々な因子(患者の年齢、生活歴、既往歴等)ばらつきがあるため、動物モデルを用いて本当にmiRNAの血中の含有量も上がっているか、確認する。エラスターゼをラットの大動脈に注入して、大動脈瘤モデル動物の作成を行い、組織、血液中でのmiRNAの発現量を調べる。
細胞レベルでもヒト血管平滑筋を用いた実験を行う。

次年度使用額が生じた理由

実験で使用する消耗品がまだ余っており、物品費が予定より少なくて済んだため。翌年度は動物実験を中心に実験を行い、動物実験に使用する物品購入に次年度使用額を充てる予定である。

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公開日: 2024-12-25  

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