研究課題/領域番号 |
23K08270
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川村 匡 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい准教授 (70583011)
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研究分担者 |
今岡 秀輔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50839587)
村上 貴志 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60919447)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 経皮的補助循環 / 中等度低体温 / 心不全 |
研究実績の概要 |
急性心不全に対し、機械的補助循環による心筋負荷軽減中における中等度低体温療法の心筋保護効果の検討を行った。まずは心筋負荷軽減中における中等度低体温療法(中枢温30-31℃)の検討を行うこととした。50kg台のブタを使用。2頭実験を行った。正中切開で開胸。上行大動脈に送血管を挿入、右房と左室より脱血管を挿入してCentral ECMOを確立した。上行大動脈よりValsalva洞、左房と、冠静脈にラインを挿入し、圧モニタリング及び冠動脈と冠静脈の採血を行った。Central ECMOは流量60-80ml/kg、左房圧は平均5mmHgを維持した。Central ECMO補助下、左冠動脈前下行枝第1対角枝分岐後すぐ末梢で結紮して急性心筋梗塞を作製した。急性心筋梗塞作製30分後に低体温導入し、45分で中枢温30-31℃まで冷却、その後2時間中等度低体温を維持し、45分で復温、復温後30分で最終評価を行った。1頭目は復温中にコントロール不良の心室性不整脈が起こってしまい、最終評価では心機能は温存されていなかった。2頭目は1頭目の反省から麻酔方法の再検討、抗不整脈(アンカロン)の持続静注、復温前の抗不整脈薬(キシロカイン、マグネゾール)の投与を行い、復温中は不整脈が起こらず洞調律を維持できた。最終評価での心機能は心筋梗塞導入前と比較して低下を認めず、温存されていた。冠動脈と冠静脈の採血により低体温中の心筋代謝を検討したところ、恒常性は維持されており、乳酸及びケトン体のエネルギー代謝基質の利用は低体温下で常温下と異なることが推察された。低体温下では有酸素エネルギー代謝が抑制されるためケトン体利用が抑制され、無酸素エネルギー代謝で産生された乳酸が有酸素エネルギー代謝基質として利用されていることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性心筋梗塞に対する機械的補助循環サポート下における中等度低体温療法のモデルの作製は達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは去年度に採取した心筋の評価を行う。低体温療法により虚血下の有酸素エネルギー代謝が抑制され、活性酸素種の産生が抑制されていると推定している。Dihidroethidium (DHE)染色を行い、心筋における活性酸素種の評価を行う。心筋におけるカルシウム関連タンパク(CERCA2a)の評価も行う。活性酸素種の産生を抑制すれば、心筋におけるカルシウム関連タンパクの活性も維持されていることが考えられ、特殊染色により病理学的に評価する。さらには心筋を電子顕微鏡で心筋ミトコンドリアの虚血下における中等度低体温療法の形態学的影響を評価する。上記メカニズムで中等度低体温療法が有効ならミトコンドリアの形態が維持されていると推察される。以上の評価により中等度低体温療法の有効性を病理学的に検討する。 病理学的検討方法の確立後、常温群1頭、中等度低体温群1頭の実験を行い、常温群と中等度低体温群の比較を行う。中等度低体温群では常温群と比較して心機能が維持されており、中等度低体温群と比較して活性酸素種の産生が抑制されることで心筋におけるカルシウム関連タンパクの活性や心筋ミトコンドリアの構造が維持されていることを確認する。その後、それぞれの群で3頭ずつ実験を行い、まずは機械的補助循環による中等度低体温療法の心機能温存効果の有用性に関して検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する動物費用単価が高く、研究費使用金額の調節性が低く、次年度使用額が生じた。次年度以降は動物実験後のサンプル解析を行うため、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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