研究課題/領域番号 |
23K08300
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
坪地 宏嘉 自治医科大学, 医学部, 教授 (50406055)
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研究分担者 |
柴野 智毅 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10648900)
小林 哲也 自治医科大学, 医学部, 助教 (40974499)
仁木 利郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (90198424)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺癌 / 微小転移モデル / 可視化 / 化学発光ライブイメージング |
研究実績の概要 |
我々は進行肺癌の手術に積極的に取り組んでおり、予後の更なる改善を目指した集学的治療の意義について報告してきた。進行肺癌の治療成績向上のためには、術後再発の制御が重要な課題の一つである。術後再発を抑制する方策として術後補助療法が挙げられるが、その目的は微小転移巣の消滅ないし増殖の抑止である。最近では上皮成長因子チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)や免疫チェックポイント阻害薬といった新規薬剤による術後補助療法の有用性も報告されている。今後も多様な薬物について、術後療法における有効性評価の重要性が高まることが見込まれるが、主病巣摘出後は評価病変がなく、その効果判定は臨床試験に依存せざるを得ないのが現状である。 従来の微小転移モデルでは転移巣を生体で可視化することは困難であり、転移病巣を見出すためには動物の解剖が不可欠であった。このようなモデルでは経時的な薬物の効果判定などの解析は不可能である。微小転移を描出できる生体モデルが実現できれば、薬効の評価や微小転移に寄与する遺伝子の解析など幅広い応用が期待できる。また、微小転移巣は解剖後の組織でも同定困難であり、微小転移巣の新たな検出法の開発が期待されている。 マウスの胸腔内に肺癌細胞株を移植した後に、胸膜播種のみならず両肺の毛細血管やリンパ管内に数個単位で癌細胞の集塊が形成されることを見出した。この所見は我々がこれまで作成してきた心左室内投与による微小転移モデルに比べ、より早期の転移の病態を反映している可能性がある。このモデルをより安定して作成できるよう研究を進めてきた。その結果、一部のマウスには肺内の微小癌細胞集塊が形成されることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスの胸腔内に肺癌細胞株を移植した後に、胸膜播種のみならず両肺の毛細血管やリンパ管内に数個単位で癌細胞の集塊が形成されることを見出した。この所見は我々がこれまで作成してきた心左室内投与による微小転移モデルに比べ、より早期の転移の病態を反映している可能性がある。このモデルをより安定して作成できるよう研究を進めてきた。その結果、一部のマウスには肺内の微小癌細胞集塊が形成されることが確認できた。 当初、微小転移モデルで使用してきた肺癌細胞株H441, HCC4006, ABC-1にレンチウイルスベクターを用いてAkaLucとVenusの融合蛋白質を発現させ、マウスを屠殺することなく化学発光ライブイメージングにより転移巣を観測することを計画していたが、安定した化学発光を観測するところまでには至っていない。 さらに、細胞移植後8週でマウスを屠殺解剖し、摘出した肺を脱脂・脱色試薬CUBIC-Lと屈折率均一化試薬CUBIC-Rにより透明化したのちに。ライトシート顕微鏡にて三次元イメージングデータを構築し、微小転移巣の三次元的な画像解析を行うことも予定しているが、その段階までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの胸腔内癌細胞投与による微小肺転移モデルをより安定して作成できるよう、工夫を重ねる。さらに肺癌細胞株H441, HCC4006, ABC-1にレンチウイルスベクターを用いてAkaLucとVenusの融合蛋白質を発現させ、化学発光ライブイメージングによる転移巣の観測を実現する。 さらに、微小転移巣の三次元的な画像解析についても具体化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験に用いる試薬の購入が不必要になったため。 今後試薬及びマウスの購入に充当する予定である。
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