研究課題/領域番号 |
23K08303
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
神崎 正人 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80277136)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺胞上皮細胞 / 組織工学 / 肺再生医療 |
研究実績の概要 |
肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell;AEC)は、肺で酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換に不可欠、重要な細胞である。I型AEC(AEC1)とII型AEC(AEC2)があり、AEC2は、様々な要因で死滅したAEC1を補填するためにAEC1に分化する。また、重症肺炎、敗血症など様々な疾患が原因で引き起こされる急性肺障害(acute lung injury;ALI)では、過剰なAECの死滅により重度の呼吸不全に陥る。一方、慢性に進行した呼吸不全に対する唯一の救命手段は肺移植となる。ドナー不足は深刻で、肺再生医療の果たす役割は大きく、期待が寄せられている。AECの再生では、マウス由来フィーダー細胞との共培養や三次元培養が確立されている。異種由来の細胞を使用し培養せざるを得ず、ヒトに応用するには安全性の担保としては改善余地がある。今回、細胞シート工学を用いAECの単離、培養に成功し、ラットでフィーダーフリー(FF)で培養し、AEC単一細胞シートを作製してきた。本申請では、FF下に培養したAECの効率的な培養法、分化増殖能を評価し、AECを脱細胞化肺に気管内投与、移植しAECの特性、肺への生着率、動向から、AECの臨床応用の可能性を、生着したAECが分泌する肺サーファクタントの分泌量、AECが分泌する各種の因子により検討する。また、脱細胞化肺の作製およびAECの移植は、ヘパリン (50 U/mL) とニトロプルシドナトリウム (1 μg/mL)を含むリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) で右心室を介して肺を灌流し、肺動脈と気管を介して灌流システムに接続し、肺の脱細胞化バイオリアクターに取り付ける。その後、組織をPBS で洗浄し、気管からAEC(2X105 cells)を灌流し、肺の組織再生能に注目し、組織学的検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共培養や三次元培養が確立されている。異種由来の細胞を使用し培養せざるを得ず、ヒトに応用するには安全性の担保としては改善余地がある。細胞シート工学を用いた再生医療技術により、ラットでフィーダーフリーで培養、AEC単一細胞シートを作製している。本申請では、2023年はフィーダーフリー下に培養したAECの効率的な培養法、分化増殖能を評価した。さらに、AECを脱細胞化肺に経気道的に移植した。単離したAECを、rhoキナーゼ阻害剤を含む低Ca 2+ 培地(LCM)を用い、rLN511E8でコーティングした組織培養皿で培養したところ、安定しフィーダーフリーでAECは培養可能であった。その培養したAECを経気道的に移植したが、AECは脱細胞化肺に偏在性に存在していた。脱細胞化肺に関しては、組織学的に局所的に肺サーファクタントD陽性細胞が残存していたが、灌流条件を変えることでnativeの細胞は排除出来た。現在、脱細胞化肺にフィーダーフリー下に培養したAECを繰り返し移植している最中である。
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今後の研究の推進方策 |
フィーダーフリー下に培養した肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell;AEC)の効率的な培養法を検討し、単離したAECを、rhoキナーゼ阻害剤を含む低Ca 2+ 培地(LCM)を用い、rLN511E8でコーティングした組織培養皿で培養したところ、フィーダーフリーでAECは急速に培養可能で分化増殖能を有しており、安定し培養可能であった。移植に適するAECの培養条件は最適化出来つつある。本年度、脱細胞化肺に関しては、現時点では組織学的にHE染色では肺内に細胞が存在し、免疫組織学的に局所で肺サーファクタントD陽性細胞が残存していたことから、灌流方法の再検討が必要であり、肺動脈に加え気管からも灌流を行ない、肺の脱細胞化を図りたいと考えている。手技的に複雑ではあるが、灌流条件を見直し、肺の脱細胞化、nativeの細胞の排除を安定し可能にしていく予定である。脱細胞化肺にフィーダーフリー下に培養したAECを繰り返し移植している最中であるが、培養AECの経気道移植では、AECは脱細胞化肺に偏在性に存在していた。脱細胞化肺内に偏りなく、均一な細胞播種方法を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品が納品されなかったため次年度使用額が生じたが物品が納品された際にはその支払いに使用する予定である。
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